リチウムイオン電池と並んで電気自動車(EV)の中核部品になりつつある電動アクスル。異業種や新興メーカーの参入が相次ぐ中、メガサプライヤーは戦略の立て直しを急ぐ。標準品を中心とする事業モデルを生かしつつ、技術の選択肢を増やして多様なニーズに応える。“カスタマイズ力”を高めるため、パワー半導体やインバーター、減速機の内製化を加速する。
「電気自動車(EV)の拡販期に入り、電動アクスルは標準品を用意するだけでは、自動車メーカーの幅広い要求に応えられなくなってきた」―。ある欧州系メガサプライヤーのパワートレーン技術者はこう明かす。電動アクスルは駆動用モーターとインバーター、減速機などを一体化した電動駆動モジュールである。メガサプライヤーのほか、異業種や新興メーカーなどの参入が相次ぐ(表)。
メガサプライヤーにとって、最大のライバルとなるのが日本電産だ(図1)。同社は2019年に電動アクスルの量産を開始。徹底した低コスト化で、中国を中心に勢力を急拡大している。2021年には、同国における電動アクスルの外製メーカーとして首位となる27%のシェア(市場占有率)を獲得した。
日本電産の勢いは中国だけにとどまらない。同社と合弁を組む欧州Stellantis(ステランティス)向けを中心に、欧州の自動車メーカーにも食い込み始めた注1)。「駆動用モーターを内製している欧州の高級車大手が外製品の調達に切り替える検討をしており、引き合いが来ている」(日本電産の常務執行役員で車載事業を担当する早舩一弥氏)と明かす。
世界最大のEV市場である中国では、現地の新興や異業種による電動アクスル市場への参入が相次ぐ。生産技術や供給能力、品質などは未知数だが、開発スピードの速さを特徴とする。現地の自動車メーカーや、日系・欧州系との合弁の自動車メーカーなどへの採用実績を着々と積み上げている。