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電動化や自動化が進展し、ソフトウエアによる差異化が重要性を増す次世代車―。だが、そのためには幅広いクルマに搭載可能な小型・軽量な電動アクスルや、ソフトによる緻密な制御を生かせる優れたハードウエアが必要になる。ソフトエンジニア不足も考慮し、ときにはハードで差異化するメリハリも重要だ。

 電気自動車(EV)化などの電動化が進み、運転支援や自動運転の機能がますます高度化する次世代車―。そんな次世代車においては、差異化の主役は、これまでの機械(メカ)技術のようなハードからソフトに移り変わっていくとみる専門家は多い。だが実際には、そうした次世代車だからこそ、メカ技術が重要になってくる。

電動アクスルの小型化で電動化促進

 例えば、大容量の電池を搭載しなければならない次世代EVを考えてみよう。そうしたEVでは、車種によっては空間の取り合いがさらに厳しくなる。搭載性に優れたより小型・軽量な電動アクスルが必要になる。電動アクスルは、モーター、インバーター、ギアボックス〔減速機、差動歯車機構(ディファレンシャルギア、デフ)〕から成るEVの主要部品。ギアボックスをより小型・軽量にできるメカ技術があれば、電動アクスルの小型・軽量化に貢献できる。

 米S&P Globalの予測によると、EVでは、電池の搭載容量がB~Eの全セグメントにおいて年々増加傾向にある。電池の搭載容量が増えれば、電動アクスルの搭載に関する空間的な制約は厳しくなる。

 さらに、同社の予測では、2021年から2029年にかけて、EVにおける四輪駆動(4WD)車の比率は全セグメント平均で19%から38%に増加する。4WDのEVでは、二輪駆動(2WD)のEVに対して電動アクスルを追加で積む。その搭載スペースをいかに確保するかが課題となってくる。

 加えて、4WDのEVでは電池の搭載容量も、2WDのEVに対して2割ほど大きくなる傾向がある。従って、4WDのEVでは、電動アクスルの小型・軽量化がより強く求められる可能性が高い。

 EVに加え、ハイブリッド車(HEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)においても、電動4WD化の進展で、後輪側に電動アクスルを搭載するケースが増えている。後輪側は、フロントフード下の空間が使える前輪側と比べて、電動アクスルの搭載スペースは限られている。

 電池や燃料タンクと共存させながら、荷室を狭めたくない、最低地上高をしっかり確保したいなどの要求にも対応していかなければならない。すなわち、より幅広い車種で電動化を進め、さらに電動車の性能を高めていくには、電動アクスルの小型・軽量化が期待される。