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 大型パネル工法のユーザーはどう見ているか?──。ウッドステーションの工法を常用する工務店や設計事務所、3者に聞いた〔写真1〕。

〔写真1〕共通項は「現場の大工も歓迎」という実感
〔写真1〕共通項は「現場の大工も歓迎」という実感
左から天野保建築(山梨県富士吉田市)の天野洋平専務、サトウ工務店(新潟県三条市)の佐藤高志社長、スタジオエンネ(広島県東広島市)の松下陽子代表。3者の声に共通するのは「現場の大工も歓迎している」という実感だった(写真:日経ホームビルダー)
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 天野保建築(山梨県富士吉田市)は高性能住宅に特化して新築は年間2棟手掛ける。天野洋平専務は大工出身で、設計から現場監督を担当。自らも木工事をこなす1人親方だ。2019年から全ての新築で大型パネル工法を採用〔写真2〕。大工の目線から複数の利点を指摘する。

〔写真2〕「現場作業を極力減らすため」
〔写真2〕「現場作業を極力減らすため」
大型パネル工法を採用した天野保建築の現場例。屋根もパネル化して現場作業を極力減らしてきたという(写真:天野保建築)
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 まず、大工の作業効率に左右されない点だ。通常の現場では建て方後の下地施工時、大工は監督の要所要所の指示を仰ぐ。経験の浅い監督が必要な指示を出せなかったり、誤った指示を出したりして手戻りが生じることもある。大型パネル工法でそうした時間的ロスは生じない。

 また少し複雑な設計の建物の場合、大工が現場で取り合い部などの納まりを考える場面がよくある。「経験豊富な大工は様々な納まり例を熟知しているが、図面を残しているわけではないので、そのつど考える。作業の手も止まる」(天野専務)。大型パネルは、「施工図」作成時点でそうした検討が既に終わっている。

 天野専務は施工図自体の役割も評価。「納まりを他の物件にも生かせるし、部材リストは見積もりのバックデータになる。安全をみた余分な発注も減らせる」と話す。

 作業環境や天候の良しあしによる影響も、大幅に軽減できるという。大型パネルは透湿防水シート施工まで完了した状態で現場に届くので、雨養生による作業中断が減り、工事全体の作業効率が上がる。工場製作時の事前打ち合わせや製作時間を除き、一般的な住宅で1物件当たり10日から2週間、付加断熱の物件や敷地条件が難しい物件で3週間程度の工期短縮効果があるという。

 「設計が複雑な建物ほど、大型パネル導入のメリットが大きいと思う」と話す天野専務は、時間やコストなど効率化・省力化できた分を、造作家具などの付加価値を顧客に提案することに振り向けている。