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 決壊地点から約400m西南西側に立つ木造2階建ての住宅Bでは、建物の南側と西側が約13cm浮き上がり、北東側に傾いた〔写真1〕。隣の古い別棟は床上浸水だけだ〔写真2〕。

〔写真1〕渡り廊下の外壁が変形
〔写真1〕渡り廊下の外壁が変形
築18年の住宅B(写真左手)とそれより老朽化した別棟を南側から見る。浮いたのは住宅Bだけなので、2棟をつなぐ渡り廊下の外壁が変形した。写真は取材先住宅会社の提供
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〔写真2〕道路面から1m盛り土
〔写真2〕道路面から1m盛り土
住宅Bと別棟は2棟とも道路面から約1m高い盛り土に立つ。外周部は敷地の地盤面から腰高まで浸水したが、住宅Bの室内の浸水は地盤面から60cmの高さにとどまった(写真:田村 和夫)
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 住宅Bは築18年で、ベタ基礎と外壁にプラスチック系断熱材を外張りして、C値(相当隙間面積)が0.1cm2/m2前後という高い気密性能を確保していた。

 建物の西側が浮いた原因について田村代表は、「建物荷重の軽い平屋建てだからだ」とする。現場で確認された、基礎下面から1m5cmの浸水深で西側の浮力を計算したところ、建物荷重を上回っていた〔図1〕。「2階建て部分は建物荷重が浮力を上回るが、基礎はつながっているので平屋建て部分にひきずられて浮いた可能性がある」(田村代表)

〔図1〕平屋部分は浮力が上回る
〔図1〕平屋部分は浮力が上回る
住宅Bの配置図。四隅の値は被災後に測定した水平レベル。部分ごとの値は基礎下面から1m5cm浸水した場合の浮力と、部分ごとの建物荷重を示す。平屋部分は浮力が荷重を上回るので、浮く状態になる(資料:田村和夫代表の資料を基に日経ホームビルダーが作成)
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 また、住宅Bは敷地を約1mかさ上げしていたため、その分だけ敷地の浸水深が低い位置にとどまった。地下室を北側に設けていたことも被害を軽減したと考えられる〔写真3〕。地下室は外周部に土圧がかかるうえ、基礎下面に水が入りにくいので、浮力の発生を抑止したとみられる〔図2〕。

〔写真3〕メンテナンス用に地下室
〔写真3〕メンテナンス用に地下室
住宅Bの北側には設備機器のメンテナンス用に、天井高約2mの地下室を設置していた。地下室は浸水した(写真:日経ホームビルダー)
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〔図2〕地下室が浮き上がりを抑制
〔図2〕地下室が浮き上がりを抑制
住宅Bが浮いたメカニズムを示す。盛り土で浸水深が低く抑えられたことと、地下室に浮力が生じなかったことで、全体的に浮き上がりを抑えられた可能性がある(資料:田村和夫代表の資料を基に日経ホームビルダーが作成)
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 住宅Bでは、床に管を差し込み、地盤に薬液を注入する方法で傾いた床を持ち上げ、水平に戻した〔写真4〕。

〔写真4〕グラウト注入で水平に戻す
〔写真4〕グラウト注入で水平に戻す
浮き上がって傾いた建物を水平に直す改修工事の様子。地盤に薬液のグラウトを注入して、建物を浮いた高さまで持ち上げる(写真:平成テクノス)
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