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住宅の省エネルギー化を巡って、住まい手の健康への効果を裏付ける研究が進んでいる。断熱改修の前後で健康状態などにどのような変化が生じたかを調べる研究だ。省エネ住宅や断熱改修で顧客説明にも生かせる最新の知見を紹介する。

 住まいの温熱環境が健康にどのような影響を及ぼすか―。2020年2月中旬、日本サステナブル建築協会が14年から続けている調査の中間報告会を都内で開催した。断熱改修などによる温熱環境の改善が住まい手の健康にもたらす効果を具体的に測る「スマートウェルネス住宅等推進調査」で、慶應義塾大学理工学部の伊香賀俊治教授〔写真1〕らのグループが取り組んでいる。

〔写真1〕住環境と健康との関係を調査
〔写真1〕住環境と健康との関係を調査
住宅の断熱化と居住者の健康との相関を調べる全国調査から得られた室温と血圧・活動量・諸症状などに関わる知見を紹介した。写真は、スマートウェルネス住宅等推進調査委員会の幹事と調査・解析小委員会の委員長を務める慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科の伊香賀俊治教授(写真:奥野 慶四郎)
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 この調査では、国土交通省の「スマートウェルネス住宅等推進モデル事業」の補助を活用して住まいの断熱改修を実施した世帯と、未改修の世帯それぞれの住まい手が対象。室温など温熱環境と住まい手の健康状態との相関関係を改修の前後、あるいは実施・未実施別に調べている。中間報告会は、昨年2月初旬の第3回(日経ホームビルダー19年4月号52ページ)に続いて、今回で4回目になる。

 国が進める「健康日本21(第2次)」では、「国民の最高血圧平均値が10年間で4mmHg低下すれば、脳卒中死亡者数が年間約1万人、冠動脈疾患死亡者数が同約5000人減少する」と推計している。高血圧症と関連するファクターは食生活やストレスなど様々あるが、伊香賀教授らの研究は住宅室内の温熱環境からアプローチする取り組みだ。これまでの報告でも、「年間を通じて室温が安定している住宅では、居住者の血圧の季節差も小さい」「高齢者ほど室温と血圧との関連が強い」といった知見を示している。

 住宅の省エネ化促進では、一次エネルギー消費量など、まずは経済面や環境面の有利性がアピールされてきた。伊香賀教授らの研究は住まい手の健康面に与える効果を統計的に裏付けることで、省エネ化のさらなるメリットとして確立する狙いがある。