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気候変動の影響で豪雨による住宅の浸水被害が頻発している。国立研究開発法人建築研究所は、木造戸建て住宅の浸水被害を軽減する建築時の対策をまとめた。建築費の上昇分と浸水被害時の修復費の軽減分を比較しながら費用対効果を検証した。

 「新築時の建築費は一般的な水準だが、浸水時の修復費は高くなる住宅」と「建築費は多少上がるが、浸水時の修復費を抑えられる住宅」のどちらを選べばよいか?──。

 この質問に答える根拠を示す報告書を、建築研究所が作成した。同研究所住宅・都市研究グループの木内望主席研究監らが取り組んでいる「水害リスクを踏まえた建築・土地利用とその誘導のあり方に関する研究」の途中成果として、2020年3月にまとめた。

 近年頻発化している豪雨水害では、住宅がいったん浸水すると、修復して生活を再開するまでに膨大な労力と費用が掛かる。避難生活を強いられることも少なくない。

 木内主席研究監は次のように話す。「浸水リスクの高い土地に家を建てる建て主や住宅会社に向けて、被害の軽減策とその効果を早急に示す必要がある。欧米では政府機関や研究所がそうしたガイドブックを作成しているが、日本にはないのでプロトタイプを示した」

 報告書では、対策を講じていない従来型の木造2階建て住宅を「基準モデル」として設定〔図12〕。基準モデルに浸水被害の軽減策を盛り込んだ3つの「耐水化モデル案」をつくり、それぞれの建築費を試算。3段階の浸水深に応じた修復費を求め、費用対効果を分析した。

〔図1〕基準モデル
被害の軽減策を講じない基準モデルの主な仕様。基礎高は60cmで床断熱を採用。耐力壁の留め具は亜鉛メッキ処理したCNくぎと構造金物(資料:建築研究所の資料を基に日経ホームビルダーが作成)
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〔図2〕共通の平面で4案を比較
〔図2〕共通の平面で4案を比較
この平面図を基に、基準モデルと3つの耐水化案の仕様を盛り込んだ建築費、浸水後の修復費を比較した。建築面積は53.7m2、延べ面積は99.4m2、在来軸組み工法の2階建て(資料:建築研究所の資料を基に日経ホームビルダーが作成)
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 被害の軽減策は、浸水した住宅の修復経験のある住宅会社と建て主へのヒアリングなどを参考に、木内主席研究監らが整理した。現代計画研究所(東京都練馬区)にモデルの設計を依頼し、ヒアリングに協力した住宅会社が建築費と修復費を見積もった。基準モデルは延べ面積が99.4m2で建築費は2605万円になった。