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コロナ禍に伴う政府の緊急事態宣言を契機に、住宅産業にも「テレワーク」が浸透。地域住宅会社や工務店でも、営業面や社内業務面を中心にリモート化が急拡大した。取り組みは「新たな生活様式」として定着しつつあり、商機として積極的に生かす動きも目立つ。

 オンラインで顧客対応 
ちょっとした工夫で「中小に有利」

 東京都江東区のエーゼン大塚建設は、リフォーム事業に力を入れている工務店だ。政府が2020年4月7日に緊急事態宣言を発令後、同社は、4月13日から契約前の顧客との打ち合わせを全てウェブ会議に切り替えた〔図1写真1〕。同社の大塚健太郎代表は「顧客と対面の打ち合わせをリモート化する流れは、中小事業者にとって有利だ」と言い切る。

〔図1〕顧客対応は全てウェブ会議
〔図1〕顧客対応は全てウェブ会議
エーゼン大塚建設では2020年4月13日から、リフォームの見込み客との打ち合わせを全てウェブ会議に切り替えた。上は、ホームページに設けた問い合わせ画面(資料:エーゼン大塚建設)
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〔写真1〕スケッチや図面なども画面で共有
〔写真1〕スケッチや図面なども画面で共有
ウェブ会議による顧客対応では、カメラを手軽に切り替えられる機能が重要。写真はZoomを使って、スマートフォンのカメラで図面を拡大表示し、通話相手の顧客に示している様子(写真:エーゼン大塚建設)
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 大塚代表がこう考える理由はいくつかある。例えば、従来の対面の打ち合わせでは、プレゼンテーションなどで気の利いた“演出”や接客スキルなどで、中小事業者は大手住宅会社などに比べてどうしても分が悪い面があった。しかしリモート化すれば、コミュニケーション環境の条件は中小事業者でも同じだ。

 「中小事業者は経営者自身や設計・施工の責任者クラスが直接、顧客に対応するので、知識が豊富で話に説得力があり、対応も迅速。組織が小さいことが強みになる」。大塚代表はこのように語る。

 同社では顧客対応のリモート化により、打ち合わせに要する時間の短縮効果も顕在化している。「従来の対面による顧客対応では、打ち合わせ1回当たりで3~4時間要していたが、ウェブ会議ではこちらも顧客も必要な要件に集中して話す傾向があるためか、1回当たり1時間から1時間半程度で済む」(大塚代表)

 対面の打ち合わせでは、情報を一度に与え過ぎると顧客に強引な印象を与えてしまうので、あえて情報を小出しにして次回打ち合わせに持ち越すというケースもある。

 しかしウェブ会議では、お互いに単刀直入が基本だ。顧客自身も予算などの情報を早い段階で教えてくれるので、それに合わせた提案や見積もりをしやすいという。それは、見込み客の初回打ち合わせからクロージングまでの期間を従来より短縮化することにもつながる。

複数のツールを使い分ける意義

 コミュニケーションツールとしてウェブ会議の利点を生かすためにどのような工夫が必要か?──。

 大塚代表は、「まずツールの選び方自体がポイントだ」と話す。同社では、見込み客向けには「Zoom(ズーム)」を主体に、一般的な複数のウェブサービスを使い分けるようにしている。大塚代表はZoomについて、音質や画像の安定性とカメラの切り替え機能を評価。ただし、録画機能は使っていない。「後から録画を見直すようでは、効率化につながらない」という理由だ。

 このほか、ウェブ会議システムではないが「LINE」のビデオ通話も選択肢の1つだ。LINEは見込み客のほとんどがアカウントを持って日常的に使っているので、ストレスなくウェブ会議に誘導できるのがメリット。「だが、相手のWi-Fi環境が悪いと画像が粗くなったり、音声が途切れたりすることがある。またZoomとともに、LINEもセキュリティーの甘さを指摘する声がある点にやや懸念を感じている」(大塚代表)

 相手がビジネスパーソンの場合は「Facebook」のアプリケーション「Messenger」の利用者が多く、大塚代表も顧客対応に使うケースがある。「音質や画像が安定していて、セキュリティーも懸念はない。自分の画像も大きく表示される。相手がFacebookになじんでいる人の場合には有効」と大塚代表は話す。

 「Google」のアカウントを持つユーザー全てが使えるようになったビデオ通話サービス「Google Meet」も、大塚代表が今後の可能性を感じるツール。「シンプルで操作性が良く、初心者でも参加しやすい。音質や画質も安定しており、出先でも使える。セキュリティー面の評価も高い。自分の表示画像が小さいのが泣きどころだが、評価している」

 このように複数のツールに対応できるようにする意義を、大塚代表は、顧客それぞれが最もなじんだツールを使えることで相手のストレスを抑制する点にあると考えている。