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2020年3月に改正建築士法が施行され、4号建築物でも壁量計算書や4分割法計算書など構造図書の保存義務が課せられた。しかし、建築確認申請の際に構造図書の添付を省略できるのは従来のまま。このため、保存義務の効果を疑問視する声もある。

 改正建築士法の2020年3月施行で保存義務が課せられた構造図書は、壁量計算書、4分割法計算書(壁量バランス)、N値計算書(継ぎ手、仕口の検討)など、いずれも木造住宅の構造安全性を確保するうえで欠かせないものだ。ほかに基礎伏図、床伏図、小屋伏図、構造詳細図なども対象に含まれている。これらを15年間にわたって保存する義務が課せられた。違反した場合には、30万円以下の罰金に処せられる。

 施行から約半年が経過したが、住宅実務者の間では保存義務の効果を疑問視する声がある。

 千葉県内のある住宅会社の経営者は「構造図書の保管を義務付けても、4号特例は存続したまま。これまでどおり壁量計算書を添付しなくても建築確認は下りる。これでは壁量計算を怠る住宅会社がなくならない」と指摘する。

建築確認時はノーチェック

 今回の建築士法改正はいわゆる「4号特例」の問題と深く関わっている〔図1〕。

〔図1〕建築基準法の「4号建築物」に構造図書の保存を義務付け
〔図1〕建築基準法の「4号建築物」に構造図書の保存を義務付け
これまで、4号建築物では「構造計算ルート」と「仕様規定ルート」のいずれの場合も構造図書の保存義務がなかった。2020年3月の建築士法改正でこれらの構造図書の保存が義務付けられた(資料:神崎哲「4号建築物に対する法規制の問題点~欠陥住宅事件の実情からの提言~」を基に日経ホームビルダーが作成)
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 4号特例とは、4号建築物(木造戸建て住宅など)の建築確認申請の段階で、構造関係の審査を省略できる建築基準法上の規定を指す。壁量計算書などの構造図書を添付しなくても、建築確認が下りる流れになっている。つまり、現行法規では住宅の構造安全性を第三者の目でチェックするプロセスが義務化されていない。

 この4号特例は「建築士が構造安全性を適切に確保しているはず」との性善説の上に成り立つ。しかし現実には、木造住宅の壁量が不足し、都道府県知事から懲戒処分を受ける建築士が後を絶たない。今回の法改正には、保存義務を課すことによって、構造図書の作成を徹底する意図も込められている。

 導入の意義を国土交通省住宅局建築指導課は次のように説明する。

 「構造図書を適切に保存しておけば、仮に建築物の構造安全性に疑義が生じても、安全性が確保されていることを建築士が対外的に立証できる。設計委託者の疑問や問い合わせに正確に回答できるので、委託者の保護を図る観点からも意義がある」