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 自然災害時に国内の大手損害保険会社と連携して、被災地外の屋根・外装工事会社などが復旧工事に当たるための全国組織「全日本災害住宅レジリエンス協会」(JRD)が一般社団法人として2020年9月に設立された〔図1〕。

〔図1〕被災地外のプロが集結
〔図1〕被災地外のプロが集結
全日本災害住宅レジリエンス協会の活動イメージ。自然災害が発生すると、被災地外の屋根・外装工事のプロが被災地に集結する(資料:全日本災害住宅レジリエンス協会)
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 JRDが活動対象とするのは、風・水害、雪害などによる屋根と外装の復旧だ。発生する住宅被害は屋根と外装がほとんどなので特化した。

 組織を立ち上げたのは、全国の塗装職人が集まる日本塗装名人社(名古屋市)の池田大平代表と、建材を販売するディートレーディング(東京都中央区)の高木強専務取締役だ。池田代表は自身が設立したボランティア集団「塗魂ペインターズ」での支援活動、高木専務は被災した屋根の復旧支援活動を積み重ねてきた。

 JRDの本部長を務める高木専務は、「頻発化する自然災害に備えて、被災から復旧までの期間が長くかかる状況を変えたい。しかし、被災地の建設会社の応援に地元圏外の事業者が加わるこれまでの仕組みでは限界がある。災害発生後にすぐに駆け付けられる全国組織と新たな仕組みを作りたかった」と話す。

 新たな仕組みは、火災保険を扱う損保会社も必要としていた。被災地の建設会社は業務に追われて見積書の作成が遅い。損保会社は見積書が届かないため保険金を支払えず、復旧工事が先延ばしになり、損害費用が増大するという問題を抱える。損保会社に届く見積書は建設会社がそれぞれの方法で作成したものなので、査定に手間がかかる点も悩みだ。

 一方、被災住宅のために役立ちたいと考える事業者は全国に数多くいる。だが、警戒心を抱く被災者もおり、接するのは容易ではない。見積書を適正価格で早く作成して欲しい損保会社と、被災地で役立ちたい被災地外の事業者のニーズが一致して、この取り組みが生まれた。