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 熊本県は「気候風土適応住宅」の独自基準を、2020年12月に公表した。所管する特定行政庁が独自基準を設けることを認めた告示786号2項を、全国で初めて活用した取り組みだ。県内の特定行政庁が建築確認を手掛ける全域が対象だ。

 気候風土適応住宅の制度は、地域の気候風土や伝統的な家づくりを継承するため、建築物省エネ法で定める外皮基準の適用を除外して、一次エネルギー消費量基準を緩和するものだ。国や特定行政庁が、対象とする住宅の基準を定める。両面真壁の土塗り壁を用いるため断熱化が難しいといった伝統構法の特徴に対応している。

 熊本県は「くまもと型伝統構法を用いた木造建築物設計指針」(以下、指針)を20年3月に作成して、建築基準法に適合した伝統木造住宅の普及に力を入れてきた。しかし、指針の住宅が国の定める基準(告示786号1項1号)に当てはまらない場合があるため、同等の基準として独自に策定。21年4月に始まる建築物省エネ法の説明義務制度で、指針に基づく住宅でも、気候風土適応住宅用に緩和した省エネ基準に適合すると説明できる環境を整えた。

〔図1〕当面の基準として公表
〔図1〕当面の基準として公表
告示786号1項1号に、熊本県の独自基準(黄色の網掛け部分)を追加したチェックシート。当面の基準として公表した。告示の規定の用語の定義や判断基準については、20年度中に国が発行する「気候風土適応住宅の解説」および「建築物省エネ法Q&A集」によるとしている(資料:熊本県)
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 「いずれは300m2未満の戸建て住宅にも省エネ基準の適合義務が課されることを見越して、4月から運用を開始して適宜見直していこうと考えた。そのため、当面の基準として公表した。独自基準をつくろうと悩んでいる特定行政庁の参考になればうれしい」と熊本県建築住宅局建築課の小佐田洋一主幹は話す。