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 甚大な住宅被害を引き起こした台風の相次ぐ上陸、住宅業界の信頼を揺るがした法令違反の続発、消費税率10%への引き上げ—。日経ホームビルダーが選んだ「10大ニュース2019」で、住宅業界を取り巻くこの1年間の主な出来事を振り返る。

 9月9日、千葉市に上陸して関東広域を襲った台風15号は、観測された最大風速が同市中央区で35.9m/秒に達するなど、複数の観測地点で歴代1位を記録。全て建築基準法が定める基準風速内だったが、千葉県を中心に約7万5000棟の住宅被害を引き起こした〔写真1〕。

〔写真1〕強風でブルーシートの屋根が多数
〔写真1〕強風でブルーシートの屋根が多数
台風15号が通過した8日後の2019年9月17日に撮影した千葉県南房総市富浦町原岡地区の様子。強風により屋根にブルーシートをかけた建物が多数ある(写真:早川 由紀夫)
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 その約1カ月後の10月12日、伊豆半島に上陸した台風19号では、東日本を中心に13都県で大雨特別警報が発令された。大雨や高潮で河川の堤防決壊が相次いだほか、下水道の逆流による内水氾濫も多発。計9万棟超に達した住宅被害の4割超を浸水被害が占めた〔写真2〕。

〔写真2〕大雨で阿武隈川が氾濫
〔写真2〕大雨で阿武隈川が氾濫
台風19号の大雨による阿武隈川の氾濫で浸水した福島県郡山市の様子。阿武隈川の奥にJR東北本線が見える。2019年10月13日に撮影(写真:国土地理院)
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 住宅業界を揺るがしたのは自然災害だけではない〔写真3〕。レオパレス21や大和ハウス工業といった住宅会社の法令違反も相次いで明らかになった。レオパレス21が供給した賃貸集合住宅では計4万棟超の約半数に施工不備があることが発覚した。

〔写真3〕法令違反の続発、技術の新潮流も
〔写真3〕法令違反の続発、技術の新潮流も
左上は、レオパレス21の会見。左下は、一条工務店の「耐水害仕様住宅」の実大実験。右は、建設キャリアアップシステムに現場で出退勤を記録する様子(写真:左上は日経xTECH、左下は一条工務店、右は大安建設)
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 住宅市場への影響としては、10月からの消費税率10%への引き上げも大きな出来事だ。ただ、増税前後で駆け込み需要やその反動減はあったものの、その影響は前回増税時より軽微だという見方が多い。

 実務面で影響が大きい法令改正もあった。建築士法施行規則の改正で、「4号建築物」も構造図書の保存を義務化。改正建築物省エネ法では、住宅について省エネ基準への適合義務化は見送られたが、建て主への省エネ性能説明義務などが盛り込まれた。

 人手不足を背景に住宅建築の工業化が浸透したほか、さらなる付加価値をもたらす「安心・安全」技術の新潮流も現れてきた。技術面では、これまでの開発が実を結び始めた1年だといえるだろう。

1台風15号では「風」、台風19号は「水」が猛威

 2019年9月9日、千葉市に上陸した台風15号は最大風速が同市中央区で35.9m/秒に達するなど、複数の観測地点で歴代1位を記録。千葉県を中心に住宅被害が7万4911棟に上った。10月12日には東日本を大型で強い台風19号が襲来。広範囲に記録的な大雨や暴風、高潮をもたらし、住宅被害は9万1058棟に達した。(被害件数は総務省消防庁による12月5日時点の数値)

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2レオパレス21、大和ハウス工業の法令違反

 レオパレス21が供給した賃貸集合住宅4万棟超の約半数で施工不備が発覚。小屋裏界壁の未施工、界壁・天井仕様の不適合といった法令違反が判明した。また、大和ハウス工業が建設した戸建て住宅や賃貸集合住宅でも、柱や基礎に不適切な部位があり、「型式適合認定」に不適合だったことが明らかになった。

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3消費増税、駆け込みは軽微

 消費税率が2019年10月から10%に引き上げられた。住宅の駆け込み需要やその反動減を抑えるため、国土交通省は「住宅ローン減税の控除期間延長」を含む4つの施策を展開。住宅産業研究所の関博計社長は、「大手ハウスメーカーの受注動向を見ると、駆け込みは前回増税時のほぼ半分」と話す。消費増税の影響は軽微だったといえる。

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4省エネ基準改正の議論まとまる

 改正建築物省エネ法が2019年5月17日に公布。11月に第1弾を一部施行し、21年4月に第2弾を施行する予定だ。第2弾では、省エネ基準への適合義務化を300m2以上の中規模非住宅に広げる。住宅については省エネ基準への適合義務化が見送られたものの、設計者に対して建築主への省エネ性能の説明義務を課すことが盛り込まれた。

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5「4号」も構造図書の保存義務化

 建築士法施行規則が改正され、木造戸建て住宅など「4号建築物」でも、壁量計算書など構造図面の保存が義務付けられた。2019年11月1日に交付され、20年3月1日に施行する予定だ。壁量計算や4分割法の計算、N値計算など構造基準への適合を確認できる図書について、建築士事務所が15年間、保存しなければならない。

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6建設キャリアアップシステムが始動

 建設技能者の就業履歴や保有資格などの情報を現場ごとに蓄積する「建設キャリアアップシステム」が2019年4月から本格運用を開始した。技能者の処遇改善と現場管理の効率化につなげる取り組みだ。国土交通省は5年以内での全ての技能者と事業者の登録を目標に掲げている。

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7パナソニックとトヨタが住宅事業を統合

 パナソニックとトヨタ自動車は2019年5月9日、両社の住宅事業を統合すると発表した。20年1月に設立する新会社に、パナソニックホームズとトヨタホーム、ミサワホームなどを移管。新築戸建て住宅の年間建設棟数が約1万7000戸と、国内トップクラスの企業グループが誕生する。

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8住宅建築の工業化が浸透

 人手不足を背景に、現場の省力化に向けた取り組みが浸透してきた。面材耐力壁や断熱材、サッシなどを工場で組み上げた大型パネル工法は、現場で実績を着実に積み上げている。ビス留めなどの苦渋作業を中心に、ロボット活用の動きも活発になってきた。

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9「安心・安全」技術に新潮流

 耐震性を高める従来の安全対策だけでなく、さらなる付加価値をもたらす「安心・安全」技術の開発が活発になってきた。一条工務店は開口部の隙間を塞いだ「耐水害仕様住宅」を商品化。積水ハウスは居住者の倒伏を検知し、救急へ通報するシステムの開発を進める。

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10「卒FIT」で住宅の新市場

 住宅用太陽光発電システムによる余剰電力の固定価格買い取り制度(FIT)で、10年の買い取り期間が満了した太陽光発電システムが2019年11月から順次発生。19年11月と12月の2カ月で約53万件に上る「卒FIT」ユーザーに向け、新たな市場が誕生した。

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