夏場の壁内結露による被害の調査依頼が増えている。夏の結露は、冬に生じやすい窓などの表面結露よりも深刻な被害を伴いやすい。小屋裏や床下の外気を壁内に入れないことが大切だ。(日経ホームビルダー)
夏場の壁内結露に起因する被害の調査依頼が、2019年から急増している。住宅に限らず、事務所やクリニック、老人ホームなどからの依頼も少なくない。なかには、築10年で初めて被害が出たというケースもあった。
調査依頼を受けた建物は、半数以上が太平洋側の海岸近く。その他、日本海や瀬戸内海に面する場所や岐阜県飛騨地方の山中からの調査依頼もあった。海に近い場所での発生件数が多く、水蒸気量の増加を伴う平均気温の上昇も、夏場の結露被害が増えた一因と考えられる。
絶対湿度が外気と変わらず
調査物件のうち、築1年で夏にエアコンを稼働させていた部屋の壁にカビが発生した住宅は、私がこれまでに見た中で被害が最もひどかった〔写真1〕。所々黒ずんでいる箇所は、クロスの模様のように見えるが、カビだ。
その後、秋から冬にかけて、新築時の施工者が結露対策としてクロスや石こうボードを張り替え、換気扇の増設などを実施した。しかし、2年目の夏にも同様の被害が発生。建て主が原因を突き止められない施工者を信頼できなくなり、私のところに調査を依頼してきた。
この住宅ではクロスのカビ以外に、キッチンの吊り棚の底板やドア枠が反っていた〔写真2〕。1階の天井懐をのぞき込むと、2階床の構造用合板の裏側がカビで真っ黒な状態〔写真3〕。床下に潜り込むと断熱材の表面全体に水滴が付いていた〔写真4〕。
夏場の結露被害は、梅雨の時期がピークとなる。私が現場へ行ったのは8月中旬で発生のピークは過ぎていたが、温湿度などを測定すると室内の絶対湿度が高く、水蒸気量がかなり多い状態〔図1〕。絶対湿度は1階のエアコンを稼働していた部屋以外、外気とほぼ変わらなかった。
絶対湿度20g/m3超えは、体感で空気が猛烈に湿気を帯びていることが分かるレベルだ。この状態になると、石こうボードや枠材などの建材がたっぷりと水蒸気を含んでいる。
一度湿った建材は乾燥しづらく、エアコンで冷やされると結露が発生する。エアコンを稼働していた部屋も、壁内や天井懐には水蒸気がたっぷりと入り込んでいた。エアコンの稼働で室内の空気が冷え、壁などに結露が生じ、カビが発生したのだ。