手すり壁の天端の笠木まわりは、雨水が浸入しやすい危険な部位の1つだ。天端の防水層をどう納めるのが安全か。過去に日経ホームビルダーで紹介した実験結果を分析しながら、筆者がずばり回答する。(日経ホームビルダー)
今回も前回に引き続き、笠木まわりの防水について考える。
手すり壁やパラペットの天端の笠木まわりは、最も雨水が浸入しやすい危険な部位の1つである。天端の防水層をどう納めれば、高い防水性能を発揮できるのか。住宅実務者にとっては重大な関心事の1つだ。
それを考えるために、日経ホームビルダー2019年9月号の特集「手すり壁の防水『常識』大検証」に注目したい。記事では「フラット35推奨仕様」と「JIO推奨仕様」の2つの代表的な仕様書の納まり例を取り上げ、その防水性能を実験によって比較していた。
フラット35推奨仕様は、住宅金融支援機構の「木造住宅工事仕様書(2019年版)」に掲載されている納まりの参考例だ。下地木材の上に透湿防水シートを両側から張り重ね、さらに鞍掛けシートを被せ、その上に両面防水テープを貼った非常に入念な納まりだ。
一方のJIO推奨仕様は住宅瑕疵(かし)担保責任保険法人の日本住宅保証検査機構(JIO)の「防水施工マニュアル(2017)」に示されている納まり例だ。下地木材の上に両面防水テープを貼り、その上に鞍掛けシートを被せたかなりシンプルな納まりだ。
実験では、笠木の固定金具を留め付ける際に開けるビス穴周辺の漏水状況を調べた。
その結果、2つの防水仕様に明確な優劣がついた。JIO推奨仕様の防水性能の方が格段に高かったのだ。JIO推奨仕様では24カ所のビス穴全てで「○」判定。フラット35推奨仕様は、24カ所のうち19カ所で「×」判定だった〔図1〕。
ただし、この実験結果については、住宅実務者への影響が大きいだけに慎重な分析が必要だ。「×」判定の結果だけを見て「フラット35推奨仕様は防水性能に問題がある」と早合点するのは危険だ。漏水の有無を調べるだけでなく、漏水量を定量的に把握しないと、下地木材への影響を判断できないからだ。筆者は「×」判定の漏水量を推定するため、独自に追加実験をすることにした。