「設計者、施工者を問わず、雨仕舞いへの配慮が行き届いた人は、水切りの重要性をよく理解している」と筆者は強調する。なぜ水切りが重要なのか。筆者が基本から詳しく解説する。(日経ホームビルダー)
雨漏り調査をする際、筆者が重視するポイントがある。水切りの設置だ。雨仕舞いへの配慮が行き届いた人は、水切りの重要性をよく理解し、設置すべき場所に適切な大きさや形状の水切りを設けている。
そのような住宅では、防水紙の張り方やサッシの収め方など、ほかの雨仕舞いもしっかりしていることが多い。つまり、水切りの設置は、雨仕舞いの巧拙を測る指標の1つと言える。
水切りの重要性を知る住宅実務者は、雨水の流れをイメージできる人たちだ。例えば、外壁面やサッシを流れる雨水は、下端部に到達すると底面に回り込む性質がある。それを防ぐために、水が伝わってほしくない箇所の手前に水切りを設ける。
〔写真1上〕は、外壁をモルタルで仕上げた築25年の木造住宅だ。外壁の下端部に水切りを設置していなかった。そのため、散水試験を実施して雨がかりを再現すると、外壁の下端部で水が回り込んだ。
〔写真1下〕は、外壁を窯業系サイディングで仕上げた築30年の木造住宅だ。この住宅では、外壁と基礎の境界に土台水切りを設けていた。しかし、水切りの高さ方向の長さが不十分であるうえに、先端がコンクリートに接する形になっていた。散水試験をしたところ、やはり水の回り込みを許してしまった。
どちらのケースでも、回り込んだ水はコンクリートの表面に滞留する。長期的にみれば、コンクリートの耐久性や美観に悪影響を及ぼしかねない。