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(イラスト:柏原昇店)
(イラスト:柏原昇店)

 開業したばかりの小規模な工務店を営むA社長は、自ら営業から設計、現場まで全てに関わる。コストパフォーマンスの良い家づくりとの評判で、徐々に受注が増え始めた。

 建て主のB氏に依頼された住宅は、入居希望時期まで余裕がなく、短期間で打ち合わせを重ねて契約に至った。実は同時期に着工する現場が既にあり、工期をずらしたかったのだが、失注を恐れてB氏の意向に従い、契約後すぐに着工した。

 現場は、いつもの大工に頼めなかったため、初めて付き合う大工が担当した。この大工の腕がいまひとつだった。さらに運悪く悪天候も続いて、工事が遅れ始めた。

 A社長は竣工日の延期をB氏に打診したが、拒否された。やむなく応援の職人を入れて対応し、引き渡し日の前日になんとか竣工できた。引き渡し時のB氏の笑顔を見て、A社長はほっと胸をなで下ろした。