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防災瓦の安全性はほぼ確認

 沿岸部では既存住宅の多くは瓦ぶきだったため、くぎ留めしていないおびただしい数の瓦が飛散した。18年の台風21号によって近畿地方の住宅で飛散したのは主に棟や端部だったが、今回は平部も目立った〔写真5〕。

〔写真5〕平部の瓦が大量に被災
〔写真5〕平部の瓦が大量に被災
くぎ留めしていない古い瓦の平部が大量に飛散している様子。鋸南町勝山地区で撮影(写真:神清)
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 愛知県陶器瓦工業組合の理事として現地調査した碧南(へきなん)窯業(愛知県碧南市)の神谷彦二社長は次のように考察する。「近畿地方では平部に土をふいていたのに対して、千葉では瓦を野地板に直に置いて桟に引っ掛けていた。そのため土ぶきより風圧に弱くなり、平部が飛んだ」

 館山市西川名地区の海岸沿いに立つ2階建て住宅では、セメント瓦が飛散した〔写真6〕。瓦同士を突起ではめ合わせる「防災瓦」ではないタイプの瓦だ。このタイプの瓦は、建築研究所が監修した「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン(以下、ガイドライン)」によると、2本以上のくぎで留めることになっている(基準風速38m/秒の地域)。この仕様に適合していないか、もしくは施工不良が原因で、飛散したと考えられる。

〔写真6〕くぎ留めした防災瓦以外の飛散
〔写真6〕くぎ留めした防災瓦以外の飛散
館山市西川名地区の沿岸に立つ築17年の2階建て住宅では、セメント瓦が飛散した。くぎで留められていたが、防災瓦ではなかった(写真:日経ホームビルダー)
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 同組合の調査メンバーが南房総市富浦町多田良地区に立つ56軒を対象に実施した調査では、風圧による飛散被害の発生率は7割に達した。56軒の中には築10年以内の瓦葺きが5軒あり、それらは風圧で飛散していなかった〔写真7〕。この調査に当たった神清(愛知県半田市)の神谷昭範取締役は、「築10年以内は防災瓦を使いガイドラインに準拠した施工が一般的なので、その仕様の安全性は確認できた」と話す。

〔写真7〕無被害だったガイドライン準拠の和瓦
〔写真7〕無被害だったガイドライン準拠の和瓦
南房総市富浦町多田良地区で発見した、風による飛散被害のない和瓦葺きの築浅住宅。防災瓦をガイドラインに準拠して施工していた(写真:愛知県陶器瓦工業組合)
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 別の被災地では、基準風速38m/秒の地域のガイドラインに準拠した築浅住宅でも、わずかながら屋根ふき材が風で飛散していることが施工会社への取材で判明した〔写真8〕。

〔写真8〕ガイドライン準拠でも被害
平板の防災瓦が飛んだ旭市内の築1年の住宅。瓦は長さ65mmのスクリングくぎで留めていた。ガイドラインに準拠した仕様だ(写真:桶市ハウジング)
平板の防災瓦が飛んだ旭市内の築1年の住宅。瓦は長さ65mmのスクリングくぎで留めていた。ガイドラインに準拠した仕様だ(写真:桶市ハウジング)
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軒部の瓦が飛んだ香取市内の築10年以内の住宅。軒部は「セブンくぎ」で留めていた。ガイドラインに準拠した仕様だ(写真:千葉県瓦工事業組合)
軒部の瓦が飛んだ香取市内の築10年以内の住宅。軒部は「セブンくぎ」で留めていた。ガイドラインに準拠した仕様だ(写真:千葉県瓦工事業組合)
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 築10年以内の化粧スレートぶきの住宅で、化粧スレートが剥がれる被害も見つかった〔写真9〕。化粧スレートは基準風速38m/秒以内の地域は標準工法で施工できる。これらの被害は、基準風速を超える風を受けて発生した可能性がある。

〔写真9〕化粧スレートが剥がれる
鋸南町岩井袋地区で発見した築浅住宅の化粧スレート被害(写真:日経ホームビルダー)
鋸南町岩井袋地区で発見した築浅住宅の化粧スレート被害(写真:日経ホームビルダー)
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袖ケ浦市内に立つ築15年の住宅。化粧スレートが剥がれた箇所には、毛細管現象で水が吸い上げられた痕があった(写真:千葉県瓦工事業組合)
袖ケ浦市内に立つ築15年の住宅。化粧スレートが剥がれた箇所には、毛細管現象で水が吸い上げられた痕があった(写真:千葉県瓦工事業組合)
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 金属屋根では、たて平ぶきの端部をブルーシートで覆った築浅住宅を確認した〔写真10〕。端部が風圧でめくれ上がったと思われる。全日本板金工業組合連合会青年部の部長を務めるMURATA(水戸市)の村田豊社長は、「築浅でも端部の固定が不十分な施工が少なくないので、確認が必要だ」と注意を促す。

〔写真10〕たて平端部にブルーシート
〔写真10〕たて平端部にブルーシート
館山市布良地区に立つ金属たて平ぶきの築浅住宅は、片流れ屋根の端部にブルーシートがかかっていた。端部がめくれていると思われる(写真:日経ホームビルダー)
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 築年の古い住宅では、パラペットや棟に被せた板金の飛散が多数発生した〔写真11〕。下地材の腐朽でくぎの保持力が低下していたと考えられる。

〔写真11〕板金笠木が吹き飛ぶ
〔写真11〕板金笠木が吹き飛ぶ
パラペットを覆う板金笠木が吹き飛んだ鴨川市内の3階建て住宅。この部分の被害は被災地で複数見られた(写真:日経ホームビルダー)
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