関東地方と東海地方に立つそれぞれ築10年前後の住宅で、夏型結露による合板の著しい腐朽とカビが発覚した。寒冷地では、建設中の住宅現場で防湿シートに水滴が大量に付着している例が見つかった。
事例1
築10年、通気層なし
合板の内側と外側が著しく腐朽
驚きの光景が現れたのは、「畳がじめじめしている」と建て主が訴えていた部屋だ。畳と壁のグラスウールを剥がすと、床と壁の下地合板がぬれて、カビや木材腐朽菌が繁殖していたのだ〔写真1〕。関東地方に立つ木造2階建て住宅で、築約10年が経過した年の5月のことだ。
建て主が最初に気付いた異変は、階段付近の壁で、内装材に発生した染みだ。染みが生じた壁のコンセントボックスを外すと、カビ臭が漂ってきた。その後、2階東南の角部屋で畳がじめじめして、階下の居間では天井に染みが浮いているのを発見した。
建築した住宅会社は、窓からの雨漏りを疑い、窓周りにシーリングを再施工した。しかし状況が改善しなかったため、建て主が思い切って畳とグラスウールを剥がしたところ、冒頭の惨状を目の当たりにすることになった。
このトラブルで知見を求められたのが、土屋喬雄・東洋大学名誉教授だ。現場を見た土屋名誉教授がまず指示したのは、合板が腐朽している箇所にもう一度グラスウールと防湿シートを試験的に設置すること。すると、6月中旬の晴れた午後に、大量の水滴が防湿シートの裏面(壁内側)に発生した〔写真2〕。
この水滴を見て土屋名誉教授は、腐朽の原因は夏型結露と判断した。
夏型結露とは、合板などの建材が含んでいた水分が、日射による外壁や屋根の温度上昇によって壁内で気化し、相対的に温度が低い室内側で冷されて、内部で結露する現象だ。畳のじめじめや天井の染みは、防湿シート裏面に付着した結露水が下の方に流れ落ちたためだとみられる。
「グラスウールを剥がして、合板をしばらく乾かしていた後に試験施工したにもかかわらず、大量の結露が発生して驚いた。合板が相当な量の水分をため込んでいたということだ」と土屋名誉教授は話す。