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クレームから現場運営を改善

 富田製材の創業は1930年。宮大工だった初代から3代続く地域密着型の工務店だ。現在の酒向和幸社長がこうした取り組みを始めたのは、あるクレームがきっかけだった。

 「左官工事の仕上げがよくない」というクレームで、酒向社長の目から見ても出来が良くない品質だった。「『これで良し』とした職人の意識の低さとともに、顧客から指摘を受ける前に現場担当者や私がチェックできなかったことがショックだった」(酒向社長)

 木材やしっくいなどの自然素材を生かす家づくりをアピールしていただけに、状況の深刻さを改めて痛感したという。

 このクレームを契機に酒向社長は、基礎工事から木工事、外構工事に至るまでの工程を見直し、社外の専業大工職や協力会社の現場担当者からも意見を募って改善点をリストアップ。「トミダスタンダード」と名付けた施工手順書をまとめて、社内だけでなく、協力会社などの現場担当者にも徹底してもらうようにした。目標に掲げたのは、「外から見ただけで“違い”が分かる現場」への刷新だ。こうした考えに基づく運営手法を、2015年から全ての現場で実施している。

 例えば清掃は、現場内はもちろん前面道路も、朝の始業前と夕方の終業前に必ず行う。敷地の出入り口付近には植栽ポットの花を飾り、分別ごみ箱の隣には清掃具一式をセットで配置する〔写真6~8〕。

〔写真6〕養生シートで泥はねを防止
〔写真6〕養生シートで泥はねを防止
現場の敷地内は養生シートなどを敷きめぐらし、工事車両などによる泥はねを防止。建物や前面道路を汚さないための配慮であり、現場の清潔感を演出することにも効果を見込んでいる(写真:富田製材)
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〔写真7〕「見せる現場」を近隣にもアピール
〔写真7〕「見せる現場」を近隣にもアピール
敷地の前面道路に向けて掲げたメッセージボード。朝夕の清掃に関する説明書きなどのほか、植栽ポットに植えた花も飾っている。「見せる現場」を建て主だけでなく近隣住民にも認知してもらうための仕掛けだ(写真:富田製材)
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〔写真8〕清掃具とごみ箱を必ずセットで配置
〔写真8〕清掃具とごみ箱を必ずセットで配置
現場敷地内に置く分別ごみ箱の横には必ず、清掃具一式をセットで配置している。前面道路の清掃もすぐに取りかかることができる(写真:富田製材)
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 建物内でも、資材やコード類は床に置かず、壁などに仮置き場を設ける。資材の養生とともに、作業者や来場客がつまずいたりしないようにする配慮だ〔写真9〕。「地域工務店の原点はものづくり。その神髄は現場に表れる。現場を通じて顧客や近隣住民と信頼関係を築いていかなくては、生き残れない」。酒向社長はこのように考えている。

〔写真9〕資材は壁にストック
〔写真9〕資材は壁にストック
建築中の建物内では、資材類を床にベタ置きしない。壁などに仮置きの棚を設けてストックする。資材の養生と同時に、作業者や来場客がつまずいて転倒することを防ぐ配慮でもある(写真:富田製材)
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 現在の現場運営手法が浸透するにしたがって、建て主が日常の買い物ついでなどに現場に立ち寄り、現場担当者と交流する機会が以前よりも確実に増えたという。メッセージボックスを介した建て主とのコミュニケーションや近隣住民などの見学も含めて、現場担当者のモチベーション向上にも効果を発揮している。

 「現場担当者の思い入れの持ちようが、目に見えて上がったと実感している」と酒向社長は話す。