住宅の性能と品質だけでは、競合を大きく引き離す違いを出しにくい──。埼玉県熊谷市のサンアイホームが力を入れているのは、「現場」による他社との差別化だ。
同社は北関東を中心に、分譲物件を含めて年間約180棟の住宅建築を手掛ける中堅住宅会社。近藤達夫社長の持論は、「受注の決め手は“好感度”」だ。2015年ごろから、「現場の見せる化」に関する様々な工夫に取り組んできた。
「建築中の現場を通して、当社の家づくりの姿勢や、協力会社を含めた現場担当者・作業者の仕事ぶりを建て主や見込み客に実感してもらうことが狙い。ブランド力では大手にかなわない。営業担当者はもちろんだが、現場で働く人間も含めて、自社の“好感度”で勝負する」。近藤社長はこのように話す。
近藤社長が現在の取り組みに乗り出した際、まず手をつけたのは、協力会社を含めた現場関係者の意識改革だ。自社研修や定期的に開く協力会社会〔写真1〕などを介して、「どのような現場であるべきか」という認識を社内外の全員で共有するところから始めたという。
例えば「きれいな現場」「整理できている現場」といっても、人によって受け止め方が違う。そこで近藤社長は、具体的な作業や工程ごとに「あるべき姿」の事例写真を資料にまとめて、全員に提示〔図1、2〕。これらはもともと、社内や協力会社の担当者・作業者が各現場で個人的に実践していた取り組みから、それぞれの現場監督がピックアップしたものだ。
資材の置き方、養生シートの張り方、工具の置き方、施工中の様々な安全対策など、具体的な模範例の写真を題材にディスカッションを重ねることで、「あるべき姿」を全員で共有するようにした。