カネキ・パンダホームは岩手県北端部の二戸市を本拠とする地域工務店。近年は、新築の戸建て住宅を年間10棟前後、毎年継続して受注している。同社には営業専任の担当社員はゼロ。手堅い受注を支える主役は、自社の大工職たちだ。
同社では、現場でリーダーの役割を担うベテラン6人を筆頭に、大工職14人を社員として雇用している。浪岡清高社長自身も元大工職。同社では新人大工職は社員寮に最低5年間の住み込みが前提だ。木材加工全般の技術・技能や現場運営・安全管理といったスキルだけでなく、顧客や近隣住民とのコミュニケーション力もみっちり仕込む。
浪岡社長が、大工職の育成でコミュニケーション力まで重視しているのは、現場を重要な“営業拠点”と捉えているからだ。同社では、建て主からの紹介や現場近隣の住民からの問い合わせこそ、途切れない受注の基礎になっている。
教育も重要だが、現場での実践はさらに重要だ。実践ぶりを、建て主や近隣住民に分かりやすい形で見せる必要がある。現場では、敷地入り口付近の目立つ位置に立てた大きな看板に、法定表示などに加えて、現場担当者が日常順守すべきマナーや身だしなみの心得15カ条を掲示。作業中は資材の養生や、工具の整理に常に気を配る〔写真1~3〕。
「現場は建て主のもの。だから大事にする。近隣には工事で一定の迷惑がかかる。だからできる限りの配慮をする」(浪岡社長)。そうした考えを具体的に他者に伝える大切さを浪岡社長は説く。