「基礎断熱工法を採用した住宅のシロアリ被害は、どうしても発見が遅れがちになる。気づいた時には構造体まで波及しているケースが多い」。そう警告するのは日本しろあり対策協会(以下、白対協)の土井正副会長だ。
基礎断熱工法とは、主に基礎の立ち上がり部分に断熱材を施工する工法を指す。床下の熱損失を減らすために、北海道や東北地方など寒冷地で採用が拡大。最近では、温暖な地域でも導入する住宅会社が増え始めた。現在は、押し出し法ポリスチレンフォーム(ポリスチレン樹脂と発泡剤を混ぜてボード状に成形した断熱材)などが広く使われている。
注意したいのは、外張りの場合、基礎断熱材が直接土壌と接するので、シロアリの侵入経路になりやすいこと〔写真1〕。シロアリが断熱材をえさにするわけではないが、簡単に破砕して内部を通過できる。そのため、外部からシロアリ被害を発見しにくい〔写真2〕。
それを裏付けるデータがある。白対協が2017年11月から12月にかけ、会員715社を対象に、基礎断熱工法を採用した住宅の駆除実績を分析した調査だ〔図1〕。
基礎断熱経由のシロアリ被害を受けた住宅を対象に、被害の範囲を尋ねたところ「基礎断熱材のみ」は14.2%にとどまり、「断熱材に加えて土台まで」の被害が24.1%、「1階柱などの構造材まで」被害が及んだケースが47.5%を占めた。さらに「2階以上まで」広がった住宅が14.2%だった。「1階まで」と「2階以上まで」の合計は6割を超える。構造体まで波及するケースは非常に多い。