防蟻対策の基本は、シロアリの生態をよく知ることから始まる。ここでは、京都大学の簗瀬佳之准教授の監修で、シロアリの特性を解説する。
准教授

シロアリは「社会性昆虫」と呼ばれる。1つの巣の中で集団をつくり、互いに役割分担をしながら共同生活を営んでいるからだ〔図1〕。集団の中で最も多いのがえさ(木材)を取って運ぶ「職蟻(しょくぎ)」で、全体の90~95%を占める。残り5~10%が外敵と戦う「兵蟻(へいぎ)」だ。生殖活動をする「王」と「女王」は、基本的には1つの巣にワンペアしかいない。
日本国内で建築物に被害を与えるシロアリは、土の中に巣をつくって建物や樹木に侵入する「地下シロアリ」と、乾燥した木材をえさにする「乾材シロアリ」の2つに大別できる。建物に大きな被害を与えるのは地下シロアリで、これはイエシロアリとヤマトシロアリの2種類に分類できる。国内のシロアリ被害の95%以上は、イエシロアリかヤマトシロアリによってもたらされる。
ヤマトシロアリは、北海道の一部地域を除いて、日本国内のほぼ全域に生息する〔図2〕。一方、イエシロアリは、太平洋ベルト地帯や九州地方など温暖な地域を主な生息域とする。住宅被害の程度は、イエシロアリの方が圧倒的に大きい。中には、直径1m以上の大きな巣に約300万匹のイエシロアリが活動しているケースもある。温暖な地域ではイエシロアリの被害に特に注意したい。