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浸水後の被害拡大を防いで修繕工事へスムーズにつなぐ応急処置のポイントは、「壊し過ぎない」ことにある。浸水住宅の応急処置に携わった専門家の取り組みを紹介する。

POINT1 泥かき・排水・洗浄
慌てて除去せず合理的に

 浸水被害を受けた住宅では床下に浸入した水や泥がたまっている場合がある。床下浸水の被災地では、それに気付かず、カビの発生や建材の劣化を促進させてしまう例が見られる。家の周りで水があふれたときは、まず床下を確認する必要がある。

 床下にたまった泥や水は、床板を剥がさなくても除去できるケースが少なくない。田島工務店(茨城県常総市)は2015年の関東・東北豪雨で浸水した住宅の応急処置で、床下点検口から乾湿両用掃除機を入れて泥と水をほぼ全て吸い取った〔写真1〕。

〔写真1〕乾湿両用掃除機で吸い取る
〔写真1〕乾湿両用掃除機で吸い取る
乾湿両用掃除機で床下にたまった水と泥を取り除いている様子。ベタ基礎の人通口に立ち上がりがなく、この1カ所から床下全体の水と泥を吸い取ることができた(写真:田島工務店)
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 浸水住宅で応急処置を支援する技術ボランティア組織の「風組関東」では、床下点検口から排水ポンプのホースを差し込み、1mmの水かさまで吸い取るという。

 床下が土の場合、泥は水が引いて乾燥してからの方が除去しやすい。泥を除去せず、乾燥だけで済ませた住宅もある。19年の台風19号で自宅が床上浸水した信州大学の中谷岳史助教(環境工学)は、地面に敷いた防湿シート上に堆積した厚さ1cmの泥をそのままにして乾燥させた。消毒を行うことで悪臭を防いでいる。

 床下がコンクリートの場合は、泥水のにおいが残らないように水で洗浄する。岡山県倉敷市真備町で浸水住宅の応急処置に当たった妹尾建設(倉敷市)はこの作業を効率化し、床下を高圧洗浄しながら排水ポンプで水を吸い取った。吸い込み口に長さ30mのホースを付けることで、排水ポンプを床上に置いたまま遠くまで作業できるようにした〔写真2〕。

〔写真2〕洗浄と排水は同時に
〔写真2〕洗浄と排水は同時に
妹尾建設の作業員が床下にもぐり、土間コンクリートを高圧洗浄している様子。排水ポンプの吸い込み口に長いホースを取り付けて作業している(写真:妹尾建設)
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 木部を高圧洗浄機で洗った現場では、水圧で木の表面が削られるトラブルが発生している〔写真3〕。風組関東では、エアコン用の低圧洗浄機や屋外散水用のホースによる水洗いでそうしたトラブルを防いでいる〔写真4〕。風組関東の小林直樹代表は「泥は水量があれば落ちるので、高圧にする必要はない」と話す。

〔写真3〕高圧洗浄で木の表面が削られる
〔写真3〕高圧洗浄で木の表面が削られる
建て主が高圧洗浄機を使って木の表面を誤って削ってしまった柱。高圧洗浄機は10MPa前後の高い水圧を出せるので、扱い方には注意が必要だ(写真:日経ホームビルダー)
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〔写真4〕低圧洗浄機で損傷を防ぐ
〔写真4〕低圧洗浄機で損傷を防ぐ
風組関東のボランティアが低圧洗浄機(青色の機械)で土台を洗っている様子。機種は丸山製作所の「MSW029M-AC-1」(写真:風組関東)
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