住宅が床上まで浸水した場合の修繕費用には、火災保険の「水災補償」と災害救助法の「住宅の応急修理制度」などが利用できる。ただし、床下浸水はいずれも対象外になることが多い。
POINT1 火災保険
再建費を賄うならオール補償型
住宅が浸水した場合の修繕には、火災保険の「水災補償」を利用できる。火災保険に必ず付いているとは限らないので、確認が欠かせない。
水災補償の保険金は一般に、「床上浸水」「地盤面より45cmを超える浸水」「損害割合が30%以上」のいずれかの条件を満たした場合に支払われる〔図1〕。つまり、床下浸水では基本的に保険金が支払われないことをまず知っておきたい。
しかし、例外もある。床下浸水でも、屋外に設置した給湯器や室外機などが壊れた場合に保険金が支払われる水災補償の特約が、2019年10月に登場した。東京海上日動火災保険が「トータルアシスト住まいの保険」に加えた「特定設備水災補償特約」だ〔図2〕。蓄電池などの高額な設備を地盤面から45cm未満の高さに設置する場合には有効だ。
〔図2〕床下浸水でも支払われる特約が登場
保険の対象:契約の建物に付加もしくは敷地内の土地に固定された、空調・冷暖房設備、充電・発電・蓄電設備、給湯設備、およびこれらに付属する配線・配管・ダクト設備
保険金:50万円、100万円、150万円から選択
火災保険の水災補償には通常、「オール補償型」と「縮小型」の2タイプがある。前者が標準タイプで、特約を付けると後者を選択できる〔図3〕。
分類 | 保険金 |
オール補償型(特約なし) | 損害額-免責金額 |
縮小型(特約の例) | 【三井住友海上火災保険のGKすまいの保険】
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オール補償型は保険料が高い代わりに、「損害額から免責額を差し引いた残り全ての金額」が保険金として支払われる。浸水した住宅の再建資金のほとんどを保険金で賄いたい場合には有効な選択肢となる。
縮小型は保険料が安くなる分、保険金の額も少なくなる。前出の「トータルアシスト住まいの保険」で保険料を比べると、縮小型はオール補償型より年間3230円安くなる(計算条件は非耐火構造、2階建て・延べ面積100m2、保険金はオール補償型が1380万円、縮小型はその70%)。
自然災害が多発している影響で、損害保険料率算出機構は19年10月、火災保険参考純率を平均4.9%引き上げた。これに伴い、損保各社は火災保険の保険料率を引き上げる動きを見せている。
保険料率を一律に引き上げるのではなく、所在地の水災リスクに応じて差を付ける保険も現れる。20年4月に保険料率を見直す楽天損害保険の「ホームアシスト」だ〔図4〕。非耐火構造の水災補償付き保険料は最大と最小とで年間1万円以上の差が開く。