スレート瓦を塗装する際には、上下の瓦の重ね目を塞いだ塗膜を切断する「縁切り」が必要だ。これを怠ったばかりに重大な雨漏りトラブルを招いた事例を紹介する。(日経ホームビルダー)
スレート瓦に塗装をする際には、「縁切り」という作業工程が必要になる。この作業を怠ると、深刻な雨漏りのトラブルを招きかねない。今回は、縁切りに関係するトラブル事例を紹介する。
外観はきれいな住宅だが…
まずは、縁切りの説明から始めよう。スレート瓦を塗装すると、上下の瓦の重ね目に塗料が入り込む。これを放置すると、塗料が乾燥して重ね目が塞がった状態になる。それを防ぐために、重ね目の塗膜にカッターを入れて水の通り道を確保する。これが縁切りだ。この工程を省略すると、瓦の裏面に浸入した雨水を外部に排出できなくなる。
新築時のスレート瓦には最初から塗装が施してあるので縁切りは不要だが、メンテナンスで塗り替えをするときには縁切りが必要になる。
今回トラブルが起こったのは、築30年の木造2階建て住宅で、寄棟形状のスレート屋根だ。住まい手から「2階天井からの雨漏りがひどく、家が壊れないかと心配。早く直してほしい」との要望があった。
早速現地で調べたところ、2階の天井に大きな染みが見られた。小屋裏へ上ると、屋根全面に雨染みがあり、野地板は層状剥離を起こして大きなたわみが生じていた。さらに随所で腐朽菌が繁殖していた〔写真1〕。小屋裏の劣化状況は、私の過去の調査経験でも5本の指に入るほど深刻なレベルだった。
それに引き換え、外観は築30年とは思えないほどきれいで、定期的に屋根や壁のメンテナンスをしていた〔写真2〕。住まい手はきちょうめんな人で、自宅に愛着を持っている様子がうかがえた。
住まい手が丁寧なメンテナンスを心掛けていたのに、深刻な雨漏りが発生したのは、スレート瓦の塗料の塗り替えに原因があった。耐久性の高いフッ素塗料を採用したのに、施工時に縁切りをしていなかった〔写真3〕。