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雨仕舞いの基本は、雨水を速やかに排出すること。ここではセメント瓦の下に浸入した雨水が軒先の化粧破風板にせき止められて出口を失い、室内の雨漏りを招いた事例を紹介する。(日経ホームビルダー)

 今回は、セメント瓦の軒先の納まりに起因する雨漏りのトラブルを取り上げる。

 セメント瓦とはセメントと川砂を主成分とする屋根瓦で、陶器瓦より価格が安いことから高度経済成長期に広く採用されたが、現在はほとんど使われなくなった。筆者はこれまでの調査から、築30年(完成が1990年頃)から築15年(同2005年頃)の住宅に採用されたセメント瓦で、雨漏りのトラブルが多いと感じている。

 原因は軒先の納め方にある。当時施工されたセメント瓦は、雨水が瓦の内部に浸入しないことを前提にしていたので、軒先に水切りを設けないことが多かった。しかし、実際には雨水が瓦の内部に浸入することが多く、それが軒先の化粧破風板にせき止められ、壁の内側を伝って室内の雨漏りを引き起こすケースが後を絶たない。その一例を紹介する。

軒先に水切りがない

 問題となったのは、外壁をALC(軽量気泡コンクリート)板で覆った築20年の鉄骨造2階建ての住宅で、屋根をセメント瓦でふいていた〔写真1、2〕。2階居室の窓枠の右上から頻繁に雨漏りが発生した。

〔写真1〕2階の窓枠から雨漏り
〔写真1〕2階の窓枠から雨漏り
雨漏りが発生したのは、築20年の鉄骨造2階建ての住宅。2階の窓枠の右上から水が落ちてきたという(写真:神清)
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筆者が調べると、窓枠を留めるビスの周辺に水の乾いた跡が残っていた(写真:神清)
筆者が調べると、窓枠を留めるビスの周辺に水の乾いた跡が残っていた(写真:神清)
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ALC板の外壁や、隙間を埋めるシーリング材に劣化は見られなかった(写真:神清)
ALC板の外壁や、隙間を埋めるシーリング材に劣化は見られなかった(写真:神清)
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〔写真2〕屋根にはセメント瓦を使用
〔写真2〕屋根にはセメント瓦を使用
この住宅は、屋根にセメント瓦をふいていた。しかし、築15年以上のセメント瓦は、軒先に水切りを設けていないものも多い。この住宅も水切りを設けていなかった(写真:神清)
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 原因を調べるため、まずは外壁の調査から始めたが、塗装やシーリング材に劣化は見られなかった。次に屋上に登って屋根を調べようとしたところ、住まい手から「5年前に屋根と外壁の塗装工事を実施した際、セメント瓦を割られたので、なるべく屋根に登らずに調べてほしい」と要望された。

 そこで、壁にはしごを掛けて目視で調べたが、すぐに問題点を発見できた。軒先で、セメント瓦の下に軒先水切りが設置されていなかったからだ。筆者は、同様のトラブルを何度か見てきたので、今回も類似のパターンである可能性が高いとみた。

 この見立てをもとに、住まい手に2通りの改修方法を提案した。1つは屋根全面を粘土瓦にふき替える方法。工費は200万円はかかる。セメント瓦は廃番品だったので、長期的には早めに全面改修した方がよい。もう1つは、軒先部分のセメント瓦だけを改修する方法で、これなら約60万円で済む。住まい手は後者を選択した。軒先から3段分のセメント瓦を剥がして新しい屋根下地に交換し、軒先水切りを設置することにした。