
「敷地の上空を高圧線が横切っていますね。電力会社と補償契約を結んでいませんか。契約していれば、電力会社から線下補償料が支払われているはずです」
「どうだったかな。補償金をもらっている気もする。妻に聞いておくよ」
筆者は、数カ月前に中古一戸建て住宅の売却の相談を受けた。住宅地図を見たところ、近隣に送電塔があり、敷地南西部の上空を高圧線が横切っているように見える。こうした場合、電力会社から線下補償料が支払われることが多い。
民法207条には「土地の所有権は法令の制限内においてその土地の上下に及ぶ」と規定されている。高圧線が敷地内の上空を横切る場合、電力会社は居住者の敷地の上空を利用させてもらう形になる。その対価として「線下補償料」を支払う。
ところが、線下補償料を受け取っているにもかかわらず、その事実を忘れている売り主が実に多い。この問題に対する意識が薄いのだ。今回のケースもそうだった。