社員5人の身の丈にあった営業を展開するため受注エリアを「車で30分」に限定。顧客の年齢や家族構成などを絞り込むことで、顧客に「刺さる」効率的な営業が可能になった。
森川住宅(兵庫県加西市)は大工出身の先代が創業。その後、次男の森川育夫氏が先代の下で大工修業を積み、2010年に事業を継承した〔写真1〕。
当時は、知人や顧客からの紹介で年に2、3棟の新築受注とOB顧客からの修繕工事などを主な仕事としていた。
商圏が狭いと効率がいい
事業を継承してから、新規リフォーム工事の受注などによって売り上げは少しずつ増えた。しかし、森川社長はその状況に満足できなかった。「売り上げが増えても、営業経費や移動時間がそれ以上に増え、効率が悪いと感じるようになった」(森川社長)
当時は会社から車で1時間くらいの範囲を商圏としていたが、これだと往復するだけで2時間かかる現場が出てくる。それだけのエリアを5人の社員で対応していると、1つの現場を十分サポートできなくなる。そんな危機感が森川社長に芽生えてきた。
そこで、事業を継承した3年後の13年に商圏を「車で30分以内」に狭めた。「片道1時間」を「30分」に狭めただけだが、その違いは大きかった。片道30分なら社員が自宅への帰り道にちょっと顧客宅に寄ることができる。急な呼び出しがあったときにもすぐ直行できる。気軽に寄れるから、顧客との接点は自然と増える〔図1〕。
商圏を狭めた13年から19年までの6年間で、売り上げは約1億5000万円から約3億円と倍増した。年間の新築受注棟数も4棟から7棟に増えた〔図2〕。