高断熱・高気密住宅のトラブルに詳しい住まい環境プランニング(盛岡市)の古川繁宏代表が、断熱・気密化を図る工法の選び方を今号から連載で指南する。初回は基礎断熱と床断熱の使い分けだ。(日経ホームビルダー)
住宅の高断熱・高気密化を図るには、多種多様な工法や仕様が存在する。当社では、建築環境・省エネルギー機構(IBEC)が作成した「住宅の省エネルギー基準の解説」と「結露防止ガイドブック」が示す手法を基本にしながら、依頼先の住宅会社のニーズや課題に合わせて工法や仕様を見直したり、施工マニュアルづくりを手伝ったりしている。
住宅会社から、「基礎断熱と床断熱のどちらがいいか?」という質問をよく受けるが、私はいつも基礎断熱と床断熱の違いからまず説明している。
両者の違いは、断熱材を張る箇所と床下空間の扱い方にある。基礎断熱は基礎部分で断熱するため、床下空間を断熱材で区切られた熱的境界の「内部」として扱う〔写真1〕。断熱材を基礎立ち上がりの外側に張る場合は「基礎外断熱」、内側に張る場合は「基礎内断熱」と呼ぶ。外側と内側の両方に断熱材を張る仕様もある。
他方、床断熱は床下面で断熱する工法なので、床下空間を熱的境界の「外部」として扱う〔写真2〕。
当社では、断熱・気密性能を高めたい場合、基本的に基礎断熱を勧めている。3つの点で床断熱より優位と考えるからだ〔図1〕。
1つ目は、基礎断熱は工種が限られるため、施工に慣れていなくても工程管理がそれほど難しくないこと。床下がオープンな状態で施工するので施工状態も確認しやすいうえ、基礎工事と断熱工事を同時期に終えられる。これらは、施工品質の向上につながる。
2つ目は、気密性能を高めやすいこと。気密処理の必要な取り合い部が土台と基礎の間などに限られるからだ。初めて施工する場合でも、相当隙間面積(C値)を気密性能がやや高いことを示す0.5cm2/m2にできる。
床断熱では、根太との隙間や配管の床貫通部など気密処理が必要な取り合い部が多いので、気密性能を上げるのが難しい〔写真3〕。C値を1.0cm2/m2以下にするのはハードルが高い。
3つ目は、断熱・防湿・気密の連結不良が生じにくいこと。床断熱では、居室の床より高さが低くなる玄関や浴室などを部分的に基礎断熱にしなければならないので、断熱・防湿・気密の連結不良が生じやすい。これに対して基礎断熱は、床下空間を同じ断熱・防湿・気密仕様で統一できる。