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住宅実務者の間に根強く残るヒノキ信仰。土台や柱にヒノキを使えば、シロアリを寄せ付けないと考える人は多い。しかし、現実にはヒノキの土台や柱もシロアリの餌食になっている。

 日経ホームビルダー2020年3月号特集「続出!想定外のシロアリ被害」は読者の反響を呼び、様々な意見や質問をいただいた。今回の特集では、その中から2つのテーマを取り上げる。

 1つは、ヒノキの耐蟻性に関する質問だ。住宅実務者のなかには「ヒノキはシロアリに強い」と考える人が多い。読者や取材先から「ヒノキが本当にシロアリに強いのか調べてほしい」との意見をいただいた。

 もう1つは、断熱材のシロアリ被害に関する要望だ。3月号では、押し出し法ポリスチレンフォームの基礎断熱材や発泡ウレタンの吹き付け工法を採用した床下断熱のシロアリ被害を紹介した。それに対して「どの種類の断熱材がシロアリ被害を受けやすいのか。もっと詳しく知りたい」との意見が寄せられた。

 今回の特集では、これら2つの問題を取り上げ、実験で確かめることにした。

「ヒノキもシロアリの餌食に」

 実験に先立ち、ヒノキの耐蟻性について、シロアリ駆除会社の技術者から現場の声を聞いた。

 ヤマト白蟻研究所(大阪府堺市)の堀西徹社長は自身の約40年の実務経験を踏まえ「防蟻処理をしなければ、ヒノキといえどもシロアリの餌食になる。これまで何度もそのような現場を見てきた」と指摘する。

 「昔の大工の中には『うちは土台にヒノキを使っているからシロアリの心配はない。土壌処理は不要だ』と言う人もいた。しかし、そうした住宅で後年シロアリ被害に見舞われたケースもあった」(堀西社長)

 例えば、同社が数年前にシロアリ駆除を手掛けた住宅だ。築50年近くの古い住宅の浴室リフォーム工事で、深刻なシロアリ被害が見つかった〔写真1〕。土台に使ったヒノキの辺材部分がシロアリに食べられ、心材部分だけが残った。柱のヒノキでは、心材の一部も被害を受け、内部がスカスカの状態だった〔写真2〕。被害は浴室の隣りにも及び、階段下の木材にも蟻道がびっしり詰まっていた。

〔写真1〕柔らかい辺材部分がシロアリの餌食に
〔写真1〕柔らかい辺材部分がシロアリの餌食に
築約50年の住宅の浴室リフォーム工事で見つかったシロアリ被害。土台に使ったヒノキの辺材部分がシロアリに食べられ、硬い心材の部分だけが残った(写真:ヤマト白蟻研究所)
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〔写真2〕心材にまで被害が及ぶことも
〔写真2〕心材にまで被害が及ぶことも
蟻害が見つかったのは約50年前に在来工法で施工した浴室(写真上)。柱のヒノキでは、心材の一部も食害を受けていた(写真中)。浴室の隣りに位置する階段下の木材には、蟻道がびっしり詰まっていた(写真下)(写真:ヤマト白蟻研究所)
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 堀西社長は言う。「マツなどに比べると、確かにヒノキは防蟻性に優れているかもしれない。しかし、それを過信して木部や土壌の防蟻処理を怠ると、大きな蟻害を招くことになりかねない」