外壁通気工法の7つの試験体で、通気層内の空気の速度と流れ方を測定した。横長窓を付けた縦胴縁と横胴縁でそれぞれ既存規定である「3cmの隙間」を設けた試験体の他、対策を加えた試験体などだ。
住宅金融支援機構の木造住宅工事仕様書が示す「3cmの隙間」を、横長窓のまわりに設けたのが試験体T-1だ。既存規定だけで通気層内の空気がきちんと外に抜けるかを検証する。適用条件は書かれていないが、窓の幅が長くなるほど通気は困難になると推測できる。
そこで、実大試験体の南側の外壁を厚さ18mmの縦胴縁で6列の通気層(左からA~F)に分割し、測定箇所によって幅0.4~1.6m超の窓がある場合を想定できるよう窓枠を取り付けた〔図1〕。左端の通気層Aは窓なし、左から2列目Bは幅0.4m、3列目Cは幅0.8m、4列目Dは幅1.2m、同5列目のEは幅1.6m、右端のFは幅1.6m超の窓下をそれぞれ想定した。3cmの隙間は窓の左側と上下に設け、右側は塞いだ。
通気層の外側には、内部が見えるように透明のアクリル板を張った。通気の出口(上部通気口)はアクリル板と軒の取り合い部に隙間を空け、壁から空気を抜く方法とした。下部通気口には防虫部材を取り付けた。
風速を測定したのは、各通気層内の中央と隙間を設けた位置など計15カ所だ(図1のa~o)。通気層内は外の風の影響を受けるので、異なる日時に計4回測定した〔写真1〕。
風速は測定箇所で差が出た〔図2〕。当然だが、長い窓を想定した通気層ほど遅かった。eとfは4回とも0.00~0.02m/sだった。cとdは測定3回目までは同程度の速さだったが、4回目で0.03m/s以上になった。aは0.1m/s前後、bは3回目を除き0.03m/s以上を記録した。
風速で0.00~0.03m/sは同程度に見えるが、0.02m/s以下は機器の測定誤差による可能性がある。
実験を監修した土屋喬雄・東洋大学名誉教授は「0.00~0.02m/sは空気がほとんど動いていない状態、0.03m/s以上は空気が動いている状態とみなせる」と話す。つまり、幅1.6m以上の窓下に相当する通気層EとFは、空気がほとんど動かなかったということだ。
3cmの隙間を設けた箇所では、縦方向の通気経路となる測定箇所gが常に速く0.3m/s以上だった。他の測定箇所もmの3回目を除き0.1m/s以上だ。通気層内の中央は空気がほとんど動かない状態でも、隙間では動いていた。
次に、色の着いた煙を下部通気口から各通気層内に入れて、どこまで到達するかを観察する実験を、日付を変えて同様に計4回実施した。空気の流れ方を見る煙実験だ。
通気層Fに入れた煙は、4回とも途中までしか到達しなかった〔図3、4、写真2〕。一方、通気層AとBに入れた煙は下から上に3回通り抜けた。通気層C~Eに入れた煙は1回だけ通り抜けた。幅1.6m超の窓下に相当する通気層Fは、煙試験でも通気しない恐れがあると判明した。
4回目の煙実験は風の影響でどの通気層にも煙が下から入らなかったので、上から入れた。すると、通気層A~Dは煙が下に通り抜けた〔図5、写真3〕。実験の企画段階では通気は下から上と決め付けていたが、実際は風の向きによって、上から下に流れていた。