直射日光の熱量はこたつ1台分に相当する。住宅にとって日射は、冬には強い味方だが、夏には最大の敵となる。しかし、夏の問題はセオリーを押さえれば、簡単に対処できる。ポイントとなるのはアウターシェードの使いこなしだ。(日経ホームビルダー)
ほとんどの人は体に対する日射の威力をよく知っているでしょう。同じ服装で同じ場所にいても、日なたにいるか日影にいるかで決定的に冬は暖かさが違います。もちろん夏は同様に、暑さが全く違います。これは住宅内でも同じ理屈です〔写真1〕。
端的に言うならば、ビニールハウスをイメージしてください。大半の方が、一度は中に入ったことがあると思います。ビニールハウスの内部は、「南国に来たのか?」と思うほど温度が違うことは誰もが知るところです。
日射は、住宅にとって冬には強い味方となりますが、夏には最大の敵になります。しかし皮肉なことに、冬の日射は極めて味方に付けづらく、夏は避けがたいものです。そのような特性を持つ日射の威力を正確に理解している人は、一般の人ではもちろんのこと、住宅の専門家でも意外にいないと感じています。
直射日光だと「窓がこたつ」
日射の威力を数値で説明してみましょう。例えば、幅1.6mで高さ2mの引き違い窓。これは住宅でよく見かける窓です。この窓に直射日光がきっちり当たると、その熱量はおよそ600W。こたつ1台分の熱量に相当します〔図1〕。
冬は、断熱性と気密性が高い住宅であれば、この熱量だけで6畳程度の部屋なら暖房なしでも20℃を超えることがよくあります。
逆に夏は、「窓がこたつ」の状態だと、どんどん室温が上がります。これを防止するには入ってくる熱量分だけ冷房で常に熱をくみ出し続ける必要があります。電気代が余分にかかるだけでなく、冷房が強めになりがちで非常に不快です。
例えるなら、こたつに入りながら冷房を付けているような状態です。人間の体はこのように正反対の信号を同時に受け続けていると、不快感だけでなく、健康を害することさえあります。
現在、新築では多くの住宅会社が高断熱化を進めています。その結果、冬は暖かくなる方向に進んでいます。これは良いことです。一方で夏はどうなるのか──。単純に考えると、夏も冬と同様に暑くなりそうです。
日射遮蔽に対して何も考えていない住宅の場合、高断熱住宅の屋内は夏、普通の住宅より暑くなります。しかし、きちんと日射遮蔽を考えた住宅であれば、逆に普通の住宅より涼しく、冷房もよく効くようになるのです。
ところが実際には、断熱化だけは力を入れて取り組んでいながら、日射遮蔽に関して何も考えていないような印象を受ける住宅も目にします。その結果、「冬は暖かいが、夏は暑くてたまらない」という住宅も少なくないように思います。