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南面の日当たりを重視する建て主は多い。条件の良い敷地でなくても、太陽の動きと南側隣家の位置をきちんと把握すれば、南からの日射を生かす設計は可能だ。「等時間日影図」を踏まえて、建物は隣家の影をできるだけ避けて配置する。(日経ホームビルダー)

 多くの住宅購入予定者は、「日当たりは良いほうがいい」「日当たりが良いのはやっぱり南側に道路がある家」「マンションを買うなら南向き」といったように考えると思います。

 その条件に合致する土地や物件は合致しない土地や物件より高く設定されます。希望のエリア、買える金額から絞った結果、上記の条件を満たさない土地を買わざるを得ない人のほうが多いのではないでしょうか。

 そのような場合でも設計者がきちんと考えれば、南からの日射を取り入れる設計は可能です。

太陽の動きを読む

 ではなぜ南ばかりが重視されるのでしょうか。それは、南だけは庇を取り付けることで、「夏の角度が高い日射を遮りながら、冬の角度が低い日射を取り入れる」という都合の良い設計が可能だからです。東や西は夏も日射の角度が低いので、庇では遮ることができません。

 南側から冬の角度が低い日射を取り入れようとすると、南側隣家との離隔距離を大きく取るのが最も簡単な解決策です。しかし、それができないことが多いから「南側に道路があるのが良い」となるのです。

 南側隣家との離隔距離を十分に取れず南面道路もない場合、最初に検討すべきは、南東、南、南西にある住宅の位置を正確に把握することです。もし現状、建っていなければ、建築基準法上、目いっぱいの形状の住宅が建つと仮定します。

 例えば、東側、南側、西側にはいずれも隣家の敷地が接し、前面道路は北側にあるという条件の敷地をイメージしてください〔図1〕。

〔図1〕住宅と車をどう配置するか
〔図1〕住宅と車をどう配置するか
南側隣家との離隔距離を十分に取れず南面道路もない敷地。最初に、南東、南、南西にある住宅の位置を正確に把握する。もし現状、建っていなければ、建築基準法上、目いっぱいの形状の住宅が建つと仮定する(資料:松尾設計室の資料を基に日経ホームビルダーが作成)
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 この状況で建物と駐車スペースをどのように配置すべきか。2台の車が縦列駐車で良ければ、南側の離隔距離を最も取れるプランは、敷地の北寄りで東側配置もしくは西側配置のどちらかです〔図2〕。

〔図2〕南側の離隔距離を確保できるのは2プラン
〔図2〕南側の離隔距離を確保できるのは2プラン
図1の敷地で、南側の離隔距離を最も取れるプラン。建物は、敷地の北寄りで東側に配置するか、もしくは西側に配置するかのどちらかとなる。車2台の駐車スペースは縦列でよいとした。プロの建築士でも「日当たりはどちらが良いか」をきちんと答えられる人が少ない(資料:松尾設計室の資料を基に日経ホームビルダーが作成)
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 これまでセミナーなどを通じて、プロの建築士1000人以上に、「どちらの方が日当たりは良い(暖かい)ですか?」という質問を投げかけてきました。回答はほぼ半々に分かれます。さらに、理由を聞いても明確に答えられる人は非常に少ないのが現実です。

 プロといえども、きちんと太陽を考えて設計している人は少ないというのが実感です。設計者が太陽の動きを詳細に考えるところから設計を始めていないと感じる住宅も少なくありません。建て主の要望から考えた間取りを、駐車スペースと干渉しないように配置しただけではないでしょうか。