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都心で増える3階建て住宅。木構造の専門家の間では「耐震等級1の3階建ては危険」と危惧する声が多い。リスクが高い3階建てだからこそ、等級3を導入する価値は大きい。

 「耐震等級1の3階建て住宅を安易に造るのは危険すぎる」。そう語るのは南会(なんかい)工務店(東京都板橋区)の酒井建一社長だ。

 「2階建て住宅と3階建て住宅は、全く別の構造物。1層増えるだけで、地震時のリスクは格段に高まる。それに対してどれだけ余裕のある耐震設計をするか。それが3階建ての生命線」(酒井社長)

等級3をベースに3割増し

 同社が手掛ける全ての住宅は、耐震等級3に適合させている。全物件の7割を占める3階建て住宅の耐震性能には、特に気を使う。等級3をベースにさらに2~3割増しの壁量を確保しているのだ。等級1の2倍を超える壁量になる。

 そこまで余裕度にこだわるのは、完成後の耐力低下を懸念しているからだ。「大きな地震に遭遇すれば、接合金物の締め付け力が弱まるかもしれない。柱や梁も目に見えないダメージを受けるだろう。家を100年持たせ、住む人の命を守るにはそれらの影響を見込んだ余裕のある耐震設計をすべき」というのが酒井社長の持論だ。

 「等級1の3階建ては危険すぎる」と本人が力説するのも、基準法の最低ラインに合わせた等級1では、地震後の耐力低下で、基準値を下回る恐れがあるからだ。等級3に2~3割の壁量を上乗せする酒井社長からみれば、基準すれすれの等級1は論外だ〔写真1〕。

〔写真1〕柱には120mm角のヒノキ材を使用
〔写真1〕柱には120mm角のヒノキ材を使用
南会工務店が建設する3階建て住宅の現場。同社は全ての住宅を等級3に適合させている。特に3階建て住宅では、等級3にさらに2~3割の壁量を上乗せして耐震性能に余裕を持たせる。柱には自然乾燥させた120mm角のヒノキ材を使用する(写真:南会工務店)
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 同社が標準採用する耐力面材は、LIXILのSW(スーパーウォール)工法に使う壁倍率5.0の高壁倍率パネル(国土交通大臣認定品)。構造用のパーティクルボードとウレタンフォームの断熱材を一体化したパネルだ。ただし、防火地域に3階建て住宅を建てる場合、SW工法は耐火建築物の認定を受けていないので採用できない。その場合は、一般的な構造用合板とグラスウールを組み合わせる。

 耐力面材を設置する際には、地震時の揺れを制御する制震テープを貼る。あらかじめ柱や梁に制震テープを貼っておき、その上に耐力面材を重ねる。制震テープは、高層ビルの制震装置に用いるブチルゴム系素材を住宅用に加工したものだ〔写真2〕。

〔写真2〕制震テープで地震時の揺れを制御
〔写真2〕制震テープで地震時の揺れを制御
耐力面材を取り付ける際には、あらかじめ柱や梁に地震時の揺れを制御する制震テープを貼っておき、その上に構造用合板を張る。この現場は防火地域に立つので構造用合板を張り合わせたが、防火地域以外ではLIXILのSW工法の「高壁倍率パネル」を使う(写真:南会工務店)
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 躯体の木材選びにもこだわる。柱には自然乾燥させた120mm角のヒノキ材を使う。「ヒノキは圧縮や曲げの強度が他の無垢材より強く、耐久性もあるので地震時に有利に働く」(同氏)と考えているからだ。