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3年前に耐震等級3の標準化を決めた。しかし、自社設計は1割で、残る9割は他社の設計事務所などからの受注工事。等級3の比率を高めるには、耐震性能に関心を持つ設計者との協働が不可欠だった。

 堀井工務店(横浜市)の中村哲也社長は、3年前の2017年から耐震等級3を自社の標準にしている。きっかけは、エコワークス(福岡市)の小山貴史社長が講師を務めた講演会だった。

 住宅会社の親睦団体「地域主義工務店の会」が福岡市内で開いた講演会で、エコワークスの小山社長は熊本地震の住宅被害の様子を克明に説明した。話を聞いた中村社長が最も衝撃を受けたのは、等級2に準拠した物件でも倒壊した住宅があったことだ。一方で、等級3の住宅がほとんど無被害だったことを知った。

 それまで堀井工務店は長期優良住宅の認定を受けるため等級2を標準としていた。「小山氏の話を聞いて、今後は等級3を標準にすべきと考えた」と中村社長は振り返る。

「工費も工期も影響はない」

 等級3の標準化に向けて中村社長が最初に検討したのは、工事費と工期への影響だ〔図1〕。

〔図1〕熊本地震の被災状況を知り等級3を標準に
〔図1〕熊本地震の被災状況を知り等級3を標準に
堀井工務店の中村哲也社長(上)は、熊本地震の被害実態を知って等級3への移行を決めた。移行に伴う工事費や工期への影響は小さいと分かったが、全体の9割を占める他社設計の物件に等級3をどう拡大するかが課題となった(写真:資料も日経ホームビルダー)
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 壁量を増やすことで、1棟当たりの工事費がどの程度増えるのか。さらに、等級3の取得手続きによって工期にしわ寄せが及ぶ心配がないか。事前にクリアしておくべきと考えた。

 実際に調べてみると、どちらもほとんど影響なかったという。

 同社では、等級2を標準としていた時から耐力面材を使っていたが、等級3に適合する耐力面材に変えても材料費はさほど変わらなかった。

 取り付け工事の労務費への影響もほとんどなかった。耐力面材の数量が多少増えても、労務費は坪当たりの単価で発注するので金額は変わらない。「結局、材工込みの施工単価はほとんど変わらないと分かった」(中村社長)という。

 工期へのしわ寄せも心配なかった。そもそも、同社は長期優良住宅の認定を受けるために、等級2の性能表示を取得していた。それが等級3に置き換わるだけで、手続きの時間はほとんど変わらない。

 こうしてコストとスケジュールへの影響は少ないと分かったものの、等級3の標準化に向けてもう1つ大きな障害があった。

 堀井工務店が施工を手掛ける住宅の約9割は、他社の設計事務所が設計したものだ。それらの設計事務所から工事を受注したり、建て主から施工だけを受注したりする。残り1割が自社の設計・施工だ。

 自社設計の住宅は自らの一存で等級3に移行できるが、他社設計の物件はそうはいかない。設計事務所が「等級2で十分」と考えているのに、等級3に変更してほしいとは言えない。受注者の立場である以上、当然だろう。