全2407文字
PR

熊本県が豪雨災害発生後に開催した「浸水住宅復旧のための講習会」の内容などを基にQ&Aをまとめた。浸水住宅の応急処理の経験が豊富なボランティア組織「風組関東」の小林直樹代表、「建物修復支援ネットワーク」の長谷川順一代表のほか、日経ホームビルダー記者も講師を務めた〔写真1〕。

〔写真1〕ボランティアが経験を伝授
〔写真1〕ボランティアが経験を伝授
講師の1人を務めた風組関東の小林直樹代表は、豊富な経験を基に住宅を応急復旧する重要性を訴えた(写真:日経ホームビルダー)
[画像のクリックで拡大表示]

Q カビの駆除に有効な消毒薬は?

A 逆性石けん液(10%塩化ベンザルコニウム溶液)が安価で比較的安全なのでお薦めだ。水で100倍に薄めるので消毒後の乾燥が欠かせない点と、むく材を変色させる恐れがある点は注意を要する。

 濃度70%以上の消毒用エタノールは、原液のまま使用するので乾燥が早く、むく材を変色させないメリットがある。ただ、新型コロナウイルスの消毒薬として需要が窮迫しているので、入手が難しく値段も高い。

 幼児や病弱な人、アレルギー体質の人などがいて薬剤を使用できない場合は、スチームが有効。サブタンクが付いているケルヒャーのスチームクリーナー「SG 4/4」を使えば、長時間の施工も可能だ。

 家庭用塩素系漂白剤で知られる次亜塩素酸ナトリウムは安価で入手しやすいが、水害時の消毒薬としては注意を要する点が少なくない。有機物が流れてきた場合は混ざって塩素ガスを出し、漂白作用で木部を白くする。呼吸器疾患を招くリスクもあるので噴霧はできない。

 次亜塩素酸水は次亜塩素酸ナトリウムと名前は似ているが、異なる物質だ。消毒効果を持たせるには一定以上の有効塩素濃度が必要で、噴霧では使えない。

Q 消石灰は床下や室内の消毒に必要か?

A 厚生労働省は原則不要と伝える。消石灰には消毒効果を示す科学的な根拠がない。大量の土と水に混ぜて土壌のpH値を上げれば虫やばい菌を減らせるが、ベタ基礎内は土がないのでその効果も見込めない。汗をかいた肌に触れると火傷する、目に入ると失明する、吸い込むと呼吸器疾患を発症する恐れがあり、扱い方は難しい。

Q 汚泥の臭いは消えるか?

A 汚泥を取り除いて水で洗浄し、消毒と換気を徹底すれば臭いは消える。消毒にオゾン水を使うと消臭効果が高まる。

Q 排水や洗浄・作業に役立つ便利な機器は?

A 風組関東では少ない人数で効率的に応急処理を行うため、機器類を駆使している。

 屋内外での広範囲な泥出し作業で便利なのは、泥を外に押し出せる小型のキャタピラー付き除雪機。泥出し後の洗浄作業には、水圧がそれほど高くない散水用ポンプとホースを使う。床下や屋外の平らな面の洗浄は、水圧の高さより水量を多くしたほうがより速く、よりきれいになるからだ。水圧が高過ぎると木の表面を傷付ける恐れもある。8MPa程度の水圧が使いやすい。

 できるだけ水でぬらしたくない場合は、少ない水量で洗浄できる丸山製作所の「MSW029M-AC-1」を利用する。エアコン用に開発された低圧の洗浄機だ。水道水を除菌効果の高いオゾン水に変えるオゾン水生成器とこの洗浄機をつないで使えば、洗浄と消毒を同時に済ませられる。

 洗浄水の排水には、残水吸排水ポンプと乾湿両用掃除機を併用する〔写真2〕。残水吸排水ポンプには浅いくぼみにたまった水でも吸い上げられる鶴見製作所の「LSP-1.4S」を、乾湿両用掃除機にはどんなにぬれても壊れにくいプラスチック製のフィルターが付いたケルヒャーの「NT55/1Tact」を、それぞれ利用する。掃除機の本体を外に置いたまま作業できるように、延長ホースを装着する。

〔写真2〕ポンプと掃除機を併用
〔写真2〕ポンプと掃除機を併用
風組関東は浸水住宅を水で洗浄する際、残水吸排水ポンプと乾湿両用掃除機を併用することで作業効率を高めている(写真:風組関東)
[画像のクリックで拡大表示]