2020年の夏も記録的と言える厳しい暑さが続いた。新型コロナウイルスの飛沫感染を防ぐ重要ツールであるマスクや建設現場の導入が進んでいるファン付き作業着と、熱中症をもたらす体温上昇との関係を独自実験で探った。

特集
マスクは熱中症の敵か
目次
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“汚名”を着せられたマスク
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、建設現場でも日常となったマスクの着用。夏の到来とともに、突然、マスクは熱中症をもたらす不都合な存在へと変わった。評判が急転した背景には、特に建設業で目立つ熱中症被害の深刻さがある。
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複雑な熱中症のメカニズム
夏に多発する熱中症は、重症化すると死に至るケースがある。熱中症を招く要因として利用が進んできた指標が「暑さ指数」(WBGT)だ。WBGTは着衣の効果を見込んで補正するものの、マスクの影響は見込まれていない。
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マスクでの体温上昇は?
夏季の作業ではマスクを外した方が涼しくてより快適になることは想像に難くない。だが、マスクを装着した場合に、本当に熱中症を招く体温上昇の程度は増すのだろうか。軽作業を課した被験者の体温を測定し、マスク装着と体温上昇の関係を調べた。
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体温自体はほぼ変わらず
近年、建設現場などで普及してきたファン付き作業着。果たしてこのツールは熱中症予防にどの程度の効果を期待できるのか。夏の作業でも冷涼感を得やすいと言われる評判の実像を独自実験で探った。
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熱中症との関係は実は不明
マスクやファン付き作業着を装着し、作業に準じた運動後の体温変化を見てきた。その結果、これらの装着時に深部体温が有意に上下する関係は認められなかった。この結果からどのような知見が得られるのかを、実験計画で助言を仰いだ識者に聞いた。