日本住宅保証検査機構(JIO)によると、戸建て住宅で瑕疵保険の支払い対象になった構造耐力上主要な部分の不具合のうち、基礎に関するものは65.9%に達し、上部構造を上回っている。3割は構造クラックなど、地盤の不同沈下を伴わない基礎自体の不具合だ。「構造的に強くしたい」「床下の通風性能を向上させたい」「コストや工期を縮小したい」など、要求水準が高まるなか、これまで指摘されてきた多くの弱点を設計や施工の工夫で克服しようとする意欲的な取り組みを紹介する。

基礎の弱点を克服する
目次
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弱点1 基礎梁や耐圧版が折れる
基礎の仕様にも損傷の原因が
基礎に構造クラックや損傷が発生する原因は地盤の不同沈下ばかりではない。基礎自体が上部構造の荷重を受けとめきれる仕様になっていないケースも散見される。いずれも設計次第で避けられる弱点だ。
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弱点2 出隅のコンクリートが破壊
基礎の仕様にも損傷の原因が
地震では、基礎の出隅のコンクリートが壊れる被害がしばしば発生している。出隅には耐力壁の柱脚が配置されたり、アンカーボルトが埋め込まれたりするため、地震で大きな応力がかかるからだ。出隅のコンクリートが壊れると、鉄筋やアンカーボルトの定着部分が失われ、耐力壁が引き抜き力に対抗できなくなる事態も招く。
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弱点3 荷重の集中する柱が傾く
基礎の仕様にも損傷の原因が
熊本県阿蘇市に立つ築13年の木造2階建て住宅は、2016年の熊本地震で1階の和室の柱が1000分の7傾き、柱の位置から北側の建物部分が傾斜した。地盤は軟弱だったが、地震による地盤の液状化やベタ基礎の損傷は確認されなかった。基礎の下には地盤調査結果に基づき、長さ9mの支持杭を施工していた。
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弱点4 立ち上がりのない人通口
基礎の仕様にも損傷の原因が
床下に基礎梁の立ち上がりのない人通口を設ける住宅が増えている。使いやすいうえ、床下の風通しもよくなるからだ。ただ、梁せいが耐圧版の分しかない状態なので、人通口周辺の補強が不十分だと構造的に危険な基礎梁となる。
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弱点5 配管貫通口で鉄筋を切断
基礎の仕様にも損傷の原因が
基礎の鉄筋を切断して設けた配管貫通口は構造上の弱点だ。鉄筋が切れてコンクリートも断面欠損している状態なので、地震などの外力には当然弱くなる。
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弱点6 打ち継ぎ部の施工不良
品質確保に向けた施工管理を
ユーザーも含めて、基礎の品質に対する要求は厳しさを増している。施工不良を防ぐには、配筋、型枠、生コンの充填から養生まで、複数の専門工が参加する各工程の弱点を踏まえた管理能力が不可欠だ。
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弱点7 締め固め不足でクラック
品質確保に向けた施工管理を
基礎コンクリートのひび割れで多いのは収縮クラックだ。収縮クラックは構造に影響しないと思われがちだが、そうとは限らない。
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弱点8 コンクリートが入らない
品質確保に向けた施工管理を
ネクストステージ(大阪市)は第三者検査を頼まれた現場で、複数の鉄筋が束になっている基礎をしばしば見かける。鉄筋同士の間にコンクリートが入らず、設計強度を発揮できない恐れがある。構造計算を行って鉄筋量を増やした基礎で多く見られる傾向があるという。
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弱点9 未確認の生コン品質
品質確保に向けた施工管理を
現場に搬入される生コンは、配合計画書どおりのものになっているか。未確認のまま施工すると、思わぬ落とし穴にはまる恐れがある。