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基礎に構造クラックや損傷が発生する原因は地盤の不同沈下ばかりではない。基礎自体が上部構造の荷重を受けとめきれる仕様になっていないケースも散見される。いずれも設計次第で避けられる弱点だ。

 地盤補強を施したうえで設置した布基礎に、ひび割れが20カ所以上。基礎の立ち上がりの上端から防湿コンクリートに至り、さらに反対側の立ち上がりまでつながるひび割れもある。梁の中央で折れたような状態だ〔写真1〕。

〔写真1〕地震で基礎梁に幅1mm超のひび割れ
〔写真1〕地震で基礎梁に幅1mm超のひび割れ
北海道胆振東部地震で築2年の住宅の布基礎に生じた構造クラック。左側は、ひび割れの幅が1.1mmに達し、基礎梁の上端から下端まで伸びている。右側は、基礎の立ち上がりの上端から防湿コンクリートを伝い、反対側の立ち上がりまでつながったひび割れ(写真:住民提供)
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 これは、2018年の北海道胆振東部地震で被災した、札幌市清田区美しが丘に建つ築2年の木造平屋建て住宅の被害だ。基礎とは対照的に、上部構造はほぼ無被害だった。

地中梁が強度不足に

 住宅は長辺の東西方向で1000分の5傾き、東端が47mm下がった。地盤は西側が切り土、東側が盛り土で、東にいくほど盛り土の厚さが大きくなっていた。このため、地震による液状化で盛り土部分が沈下し、基礎にひび割れが生じたとみられる。

 住宅会社は基礎をつくり直して、上部構造物を再設置した場合の改修費用を800万円と算定。「地震で起きた被害なので、有償でなければ一切対応できない」と建て主に伝えた。一方、建て主は「基礎の被害は地震のためだけでなく、そもそも強度の弱い基礎だったからだ」と主張。住宅会社の責任を追及する。

 建て主がこう訴えるのは、住宅の沈下原因の調査と改修工事を依頼されたソイルペディア(東京都中央区)が実施した許容応力度計算で、地中梁(基礎梁の地中部分や耐圧版の一部を補強したもの)の強度不足が見つかったからだ。

 この住宅の基礎は外周部以外に立ち上がりがほとんどなく、内部に通した地中梁の柱スパンが約4.7mと大きい点に特徴がある〔図1〕。

〔図1〕長辺の柱スパンは4.7m
〔図1〕長辺の柱スパンは4.7m
基礎伏せ図に、地震で生じたひび割れ箇所と沈下量、コンクリート杭と柱の位置などを書き込んだ。基礎梁の長辺の中央付近に大きなひび割れが発生している(資料:取材を基に日経ホームビルダーが作成)
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 強度不足が見つかったのは、この2本の地中梁だ。主筋の上端と下端にD13を2本ずつ入れていたが、構造計算すると下端にはD13を4本入れなければ耐震等級1レベルの強度を満たせないことが分かった〔図23〕。

〔図2〕簡易な配筋の地中梁
〔図2〕簡易な配筋の地中梁
上は地中梁の断面図。D13の主筋を上端と下端にそれぞれ2本入れているだけの簡易な配筋だ。根入れ寸法も外周部の基礎梁と変わらない。下は外周部の基礎梁の断面図(資料:取材を基に日経ホームビルダーが作成)
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〔図3〕下端の配筋量が不足
〔図3〕下端の配筋量が不足
構造計算で地中梁の主筋の配筋量が不足していることが判明した(資料:取材を基に日経ホームビルダーが作成)
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 ソイルペディアの出頭(でがしら)宗隆取締役は、「地盤が沈下した方向にそもそも強度の足りない地中梁を用いていたため、外周部の基礎梁の損傷がより大きくなった」と話す。

 基礎の損傷は、沈下修正工事にも制約を与えている。改修費用を抑えるために、基礎を一からつくり直すことは避けたい。だが、損傷した状態のまま沈下修正工事を行えば、基礎に大きな負担がかかることになる。

 出頭取締役が選んだのは、薬液で地盤補強した後、建物のレベル調整を行う地盤沈下対策協会の「ダブルロック工法」だ〔写真2〕。地盤補強後に沈下修正を行うので、沈下修正の工事中も工事後も基礎にかかる負担の軽減を期待できるという。

〔写真2〕地盤補強を兼ねる沈下修正工法
〔写真2〕地盤補強を兼ねる沈下修正工法
地盤沈下対策協会の会員である我妻組(山形県米沢市)がダブルロック工法で沈下修正している様子。表層3~4mまでの軟弱層にセメント系の地盤補強剤を圧入したうえで、住宅の傾きを水平に戻す。この住宅における沈下修正工事の費用は約410万円だった(写真:日経ホームビルダー)
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