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 熊本県阿蘇市に立つ築13年の木造2階建て住宅は、2016年の熊本地震で1階の和室の柱が1000分の7傾き、柱の位置から北側の建物部分が傾斜した〔写真1〕。地盤は軟弱だったが、地震による地盤の液状化やベタ基礎の損傷は確認されなかった。基礎の下には地盤調査結果に基づき、長さ9mの支持杭を施工していた。

〔写真1〕柱が1000分の7傾く
〔写真1〕柱が1000分の7傾く
手前が1000分の7傾いた柱。ここから北側にある床も部分的に傾斜した(写真:金城重機)
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 修復工事の相談を受けた金城重機(千葉県松戸市)の堤博喜・熊本営業所長は、傾いた和室の柱と杭の関係に着目。この柱には家中で最も大きな軸力がかかり、その直下に杭が配置されていないことを突き止めた〔図1〕。柱にかかる軸力が杭に伝達されにくい状態だった。

〔図1〕荷重の集中する柱の下に杭がない
〔図1〕荷重の集中する柱の下に杭がない
2016年の熊本地震で柱が傾いた住宅の基礎伏せ図に、柱の軸力がかかる位置と杭の位置を記した。最も大きな軸力がかかる柱の下に杭がない(資料:金城重機)
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 堤所長は「和室の柱が地震の応力で傾き、その影響で北側が傾いた。他の部分は、柱の軸力が比較的小さいことや柱の下に杭があることで、大きく傾くのを免れた」と推測する。

 戸建て住宅では柱と杭の位置がずれていることは珍しくない。標準的な建物荷重を想定して、必要な本数の杭を約2mの間隔で均等に配置するのが一般的だからだ。そのため、軸力の大きい柱の位置が杭とずれて沈下するリスクのほか、荷重のほとんどかからない杭も生じる。

 この対策として、金城重機は住宅会社からあらかじめ入手した図面で柱の軸力計算書を作成し、それを基に適正な杭配置を提案する新事業「AXIS」(アクシス)を19年8月に開始した〔図2〕。「従来は施主に杭の位置や仕様の説明を求められても明確に答えることができなかったが、この方法なら構造的な安全性の根拠を持って説明できる。杭についても、改正建築士法が求める構造計算書の保存義務を果たせる」と同社の浦澤将代表は話す。

〔図2〕軸力の大きい箇所に杭を配置
〔図2〕軸力の大きい箇所に杭を配置
左は、従来からある均等配置の考えで決めた杭の位置。右は金城重機の杭配置設計支援サービス「AXIS」が採用する軸力の大きさに対応した杭配置。右のほうが杭の本数が少ない。AXISは定価6万円(税別、条件により変わる)で提供する(資料:金城重機)
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 住宅会社のエーコープ熊本(熊本市)では、小口径杭で地盤補強する際にAXISを使って杭配置を決めた。「小口径杭なら柱と杭の位置を芯までそろえて施工できるので、AXISの利用価値が高い」と現場監督の長野光記氏は話す。一方、柱状改良だと埋設配管にぶつからないように改良杭の位置を基礎の内側にずらすことが多いため、柱と位置をそろえるのがそもそも難しいという。