現しによる木の美しさを生かしながら、火災に負けない建物を実現する──。桜設計集団代表の安井昇氏が取り組むテーマだ。この連載では3回にわたって、安井氏が設計を手掛けた住宅事例で、木を現しにする設計術を解説する。(日経ホームビルダー)
地球温暖化防止への貢献や、戦後植林した人工林が伐採適齢期を迎えたことから、木を活用する機運が高まっている。国土交通省も、建築基準法を改正して木材活用を促す。特に、2019年6月に施行した改正建基法では、4階建て以上の中層木造建築物や、耐火建築物とすべき地域でも木の現しが設計しやすくなった。
木造は、設計者のアイデアが期待される新たな分野となっている。この連載では、木の現しで設計した事例を基に、設計のテクニックと法解釈について解説する。今回取り上げるのは、準防火地域に立つ木造2階建ての住宅「堀切の家」だ〔写真1〕。
堀切の家は、建て主から「東京の町家をつくってほしい」と言われて設計した。京都で育った筆者にとって、町家とは木の軒や格子、真壁、瓦などを使った建物だ。それを東京でも違和感なく実現するため、外壁や軒裏を木の現しとした国交大臣認定の仕様を採用した。これらの認定取得に関わっていたが、自らの設計で採用した最初の建物だ。このほかに窓の格子や火気使用室の内装など、木の現しを実践したい設計者にとって、基本といえる4つの設計術を採用している〔図1〕。