木造戸建て住宅の寿命を少しでも延ばすには?──。重要なポイントの1つは外皮の耐久性能だが、現状では、住宅ローン支払い中に大掛かりなメンテナンス工事が必要となる新築住宅もいまだに少なくない。外皮の耐久性能を「30年超」に延ばすことは、維持管理の負担軽減や住宅の価値向上につながり、住宅会社にとっても自社の技術力を示す格好の材料となる。「新築時の外皮性能で、30年超の耐久性を追求する」。住宅会社や建材メーカーなどの取り組みを紹介する。

目指せ! 30年超ノーメンテの外皮
目次
-
スギ板外壁で30年以上もたせる
西方設計(秋田県能代市)
耐久性の高い住宅外皮とは──。独自の工夫で取り組む住宅会社に聞いた。材料選びの視点や下地材を長持ちさせる仕様、サッシを交換しやすい納まりといったそれぞれの工夫を紹介する。
-
「サッシ4周に水切り」など大改修なしで50年超を
足立建築(静岡県浜松市)
海沿いの地元で、大改修なしで50年以上長持ちする住宅外皮を──。足立建築は、屋根や外壁の仕上げに日鉄鋼板の「エスジーエル」耐摩カラー鋼板を採用。マグネシウム添加のガルバリウム鋼板に特殊なガラス繊維塗膜を施し、「塗膜保証15年」「穴あき保証25年」を付けた建材だ。
-
「2重野地工法」を基本に屋根下地を守る
夏見工務店(滋賀県栗東市)
夏見工務店は、屋根の耐久性向上に注力している。アスファルトルーフィングを敷く野地板の下面に通気層を設けて、湿気を逃がす仕様を標準採用。登り梁と置き垂木で屋根断熱の通気層を設ける「2重野地工法」だ。
-
下地とラスは60年の耐久性を備える
モルタル仕上げ
外装を30年以上長持ちさせることに重点を置く新たな仕上げ材や工法が続々登場している。建材メーカー共同の取り組みもある。新提案のモルタル仕上げ、窯業系サイディング、木材外装の例を紹介する。
-
高耐久のシーリングと塗料で30年の耐久性
窯業系サイディング
窯業系サイディングの耐久性は塗装と、目地シーリングの性能で決まる。外装材メーカーのケイミュー(大阪市)は、光触媒コートの外装材「光セラ」と高耐久シーリング「スーパーKMEWシール」の組み合わせで耐久性30年の外壁仕上げをアピールする。
-
心材で板をそろえ水を滞留させない
木材外装
木材外装について、高広木材(東京都江東区)の渡辺幹夫社長は、「材料選びと設計のポイントを押さえれば、30年間はメンテナンスフリーが可能」と話す。ポイントは「心材を使うこと」と「水が滞留しない設計」だ。
-
波形の樹脂板で野地板上面に通気層設ける
金属横ふき
屋根を長持ちさせるために、屋根下地に通気層を設ける独自の工法・建材が続々登場している。屋根ふき材や下ふき材、通気部材の各メーカーが、共同あるいは独自に開発したいくつかの注目例を紹介する。
-
屋根ふき材に通気層 軒先・棟換気も独自部材
金属立平ふき
新工法開発の動きはほかにもある。通気部材メーカーのハウゼコ(大阪市)は、通気下地なしで野地板にたまる湿気を排出する通気機能を備えた金属立平ふき材「デネブエアルーフ」を開発。ガルバリウム鋼板(溶融アルミ亜鉛めっき鋼板)製で、2021年1月から近畿圏限定で販売開始する予定だ。
-
井桁重ねの桟木に固定 野地板のくぎ穴を減らす
化粧スレート
ケイミュー(大阪市)は2020年5月、化粧スレート屋根の通気下地工法を発表。同社の川井拓郎経営企画部長は、「野地板と下ふき材を80年長持ちさせることで、メンテナンス費用を抑えられる。また大型台風時に屋根ふき材が所定の耐風性能を発揮するためには、野地板の健全な状態ができるだけ長く維持される必要がある…
-
片面全体が粘着シート 桟木ごと覆ってホールレス
透湿ルーフィング
屋根の下ふき材は通常、タッカーで野地板に留め付ける。桟木もくぎで野地板に固定する。これらのくぎ穴にリスクはないか──。透湿ルーフィングのメーカー、ビッグテクノス(奈良県御所市)は、この解決策として、粘着剤を片面全体に施した下ふき材「ラップタイト」で桟木を覆うように野地板に張ってホールレスとする方法…
-
下ふき材は粘着剤付きを重ねる 小屋裏換気量はハイレベル設定
アスファルトシングル
米オーウェンスコーニングの販売代理店であるオーウェンスコーニングジャパン(東京都千代田区)が提案する高耐久工法は、通気下地を使わず、1次・2次防水層の性能で野地板の劣化リスクを軽減する。
-
JIS適合品で早期劣化した例も
日本産業規格(JIS)適合品の透湿防水シートが、施工からわずか十数年以内で劣化──。こうした現象が近年、住宅改修の現場で複数見つかっている。施工ミスが確認できない事例もある。
-
経年変化と施工品質が影響
住宅外皮の長寿命化を考える際、気になる点が断熱材の長期的な性能の変化だ。現在、断熱材の長期性能の表示に関する共通表示などはなく、材料を横並びで比較するのは難しい。だが、検討の手掛かりはある。
-
点検・補修をセットに定番化
大手ハウスメーカーでは近年、新築物件の防水性能に関する保証を充実させる動きが広がりを見せた。「初期保証30年」「延長保証60年」などを定番化した5社の取り組みを紹介する。
-
寿命30年の“思い込み”に挑戦
「暗黙の耐用年数30年からの脱却」。こうしたスローガンを掲げて、日本木造住宅産業協会は耐用年数60~100年の高耐久住宅を実現する研究に取り組む。2020年8月に外皮に関する報告書を発表した。