全1800文字
日本産業規格(JIS)適合品の透湿防水シートが、施工からわずか十数年以内で劣化──。こうした現象が近年、住宅改修の現場で複数見つかっている。施工ミスが確認できない事例もある。
第一浜名建装(静岡県浜松市)の久保田仁司代表が近年、雨漏り診断を手掛けた築12年の住宅Aでは、西面と南面の透湿防水シートの表面に多数の破れが生じていた〔写真1〕。久保田代表は別の調査で、築1年半の住宅Bでもシートの部分的な剥離を確認している〔写真2〕。
〔写真1〕横胴縁で通気を閉塞
2007年に完成し築12年で透湿防水シートの劣化が発覚した住宅A。ガルバリウム鋼板を横胴縁で施工して、通気層が閉じられていた。西面と南面のシートの劣化が著しかった(写真:第一浜名建装)
[画像のクリックで拡大表示]
〔写真2〕30年相当のJIS適合品
2018年に完成し、雨漏りの調査を行った1年半後に透湿防水シートの一部分で剥がれが見つかった住宅B。黒色の金属サイディングを張り、通気層が閉じられていた。耐久性30年相当のJIS適合品だった(写真:第一浜名建装)
[画像のクリックで拡大表示]
こうした例はほかにもある〔写真3、4〕。例えば住宅Cは築10年で、改修時に透湿防水シートの表面を手で触るとぼろぼろと剥離。築12年だった住宅Dでも、透湿防水シートの表面は風が当たっただけで剥がれる状態だった。Cは埼玉県上尾市の佐藤工務店が、Dは静岡県浜松市の足立建築が、それぞれ改修を手掛けた際に発見した事例だ。
〔写真3〕レンガ張りの西面
2005年に完成し、築10年時の外壁改修で透湿防水シートの表面を触るとかさかさ剥がれた住宅C。金属板下地にスライスレンガを貼って仕上げていた西面だ(写真:佐藤工務店)
[画像のクリックで拡大表示]
〔写真4〕板金張りで通気は確保
東面の外壁を下地ごと改修してから12年目に再び外装材を剥がした住宅D。わずかな衝撃で透湿防水シートの表面がぼろぼろ剥がれた。板金張りで通気は確保されていた(写真:足立建築)
[画像のクリックで拡大表示]
問題のシートは、いずれもJIS A6111の適合品で、施工時期から住宅A、C、Dは耐久性が「10年相当」の製品、Bは「30年相当」と推定されている。4例とも、基材にフィルムを張り合わせたタイプの製品だった。