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住宅外皮の長寿命化を考える際、気になる点が断熱材の長期的な性能の変化だ。現在、断熱材の長期性能の表示に関する共通表示などはなく、材料を横並びで比較するのは難しい。だが、検討の手掛かりはある。

 断熱性能の経年変化の傾向は、繊維系断熱材と発泡プラスチック系断熱材で異なる。「繊維系は湿度や振動などの外的要因で、発プラ系はガスの放出という内的要因で、長期性能が低下する」。断熱材に詳しい近畿大学建築学部の岩前篤学部長は、そう話す。

 繊維系は、繊維の間に含む空気で断熱性を確保している。時間を経ても素材自体の断熱性能はほとんど変化しないが、水分を含むと性能が大きく低下する。吹き込み施工などでは、振動で厚さが減衰し性能低下につながる場合もある。

 発プラ系は、気泡に閉じ込めたガスで断熱性を確保する製品が多い。ガスは空気よりも熱伝導率が小さく、繊維系よりも高い断熱性が見込める。ただし、ガスは少しずつ外に放出されて空気と置き換わり、性能は徐々に低下する〔図1〕。

〔図1〕熱伝導率の経年変化のイメージ
〔図1〕熱伝導率の経年変化のイメージ
繊維系断熱材と発泡プラスチック系断熱材それぞれの経年変化の傾向。繊維系は、材料自体の経年変化はほとんどない。発プラ系は、ガスの放出に伴い熱伝導率が変化していく(資料:取材を基に日経ホームビルダーが作成)
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 その低下率は一般に、表層のガスが抜けやすい製造初期が大きく、その後は次第に小さくなる。表面に密実層やラミネート層があると、ガス抜けは抑制される。

 また発プラ系でも、例えば押し出し法ポリスチレンフォーム(XPS)は製造初期の低下率が大きく、フェノールフォームは緩やかに低下するといった相対差もある。