住宅の浸水棟数は、河川決壊などによる「外水氾濫」よりも、排水インフラの能力を超えて地表にあふれる「内水氾濫」によるものが多い。特に都市部でその傾向が強い。住宅実務者にできることはあるか。
水害には河川堤防の決壊などで起こる「外水氾濫」と、支流や下水道の排水能力が限界に達し、堤防で守られた内側(居住域側)で水があふれる「内水氾濫」がある〔写真1〕。
堤防決壊による水害は甚大な被害につながりやすいので、外水氾濫ばかりに目が向きがちだが、実は水害の浸水棟数を比べると、内水氾濫による方が圧倒的に多い。住宅実務者は、両方に目配りする必要がある。
浸水棟数の7割が内水氾濫
内水氾濫には2つのタイプがある〔図1〕。1つは、短時間の豪雨で雨水が地表にあふれる氾濫。もう1つは、豪雨で河川の水位が上がり、周辺の支流や下水道の雨水を河川に排出できずに発生する氾濫だ。
内水氾濫の要因として多くの専門家が指摘するのが、都市部を中心とする新興市街化区域の開発だ。市街化することで地盤の貯水能力が減少し、雨水が外部に流出しやすくなって、周辺の低地やくぼ地での浸水リスクが高まる。こうした低地は比較的地価が安く、住宅会社が競って家を建てる例が多く、内水氾濫の被害が多発しやすい。ゲリラ豪雨はこうした場所の内水氾濫リスクを一層高める。
これまで内水氾濫の浸水深が1mを超えた例は少なく、人命を脅かすリスクは相対的に小さかった。
しかし、国内全体でみた内水氾濫の経済的損失は甚大だ。2008年から17年の国内全体の水害被害総額は約1.8兆円に達し、その4割を内水氾濫が占める(東京都は7割)。
さらに浸水棟数で比べると、内水氾濫は全体の約7割を占め、外水氾濫の2倍以上だ〔図2〕。多くの住まい手にとって内水氾濫は身近な脅威だ。