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 過去30年間を振り返ると、戸建て住宅の外壁の雨漏り対策は大きく様変わりした。最大のポイントは、通気工法、透湿防水シート、乾式工法の“3点セット”が現場に定着したことだ〔写真1〕。

〔写真1〕30年で外壁の納まりは大きく様変わり
〔写真1〕30年で外壁の納まりは大きく様変わり
30年前は、ラスを張ったアスファルトフェルトにモルタルを重ねる湿式工法が一般的だった。現在は、透湿防水シートに胴縁を打ち付けて通気層を確保したうえで、窯業系サイディングを張る例が圧倒的に増えた(写真:第一浜名建装)
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 30年前は、防水紙のアスファルトフェルトにラスを留め、直接モルタルを吹き付ける湿式工法が一般的だった。しかし、1993年に乾式工法の代表格、窯業系サイディングがモルタルに代わって外装材シェアのトップに躍り出る。当初は、防水紙にサイディング材を直接張り付ける直張り工法が主流だったが、90年代後半から透湿防水シートと胴縁をセットに壁内の通気を確保する現在の形に定着した。

 通気工法の導入で壁内の雨水滞留リスクも抑制され、雨漏りトラブルは大幅に減るかと思われた。しかし、現実はそう簡単ではなかった。

保険事故の9割以上が雨漏り

 住宅瑕疵担保責任保険の保険金が支払われた事故物件の発生原因をみると、雨水の浸入は全体の約93%を占める〔図1〕。今なお、雨漏りのトラブルは住宅実務者にとって最大の懸念事項だ。

〔図1〕保険事故は雨漏りが9割以上を占める
〔図1〕保険事故は雨漏りが9割以上を占める
2018年3月までに住宅瑕疵担保責任保険の保険金の支払いが完了した事故、累計4496件の原因を示したもの。雨水が約93%を占めた(資料:国土交通省の資料を基に日経ホームビルダーが作成)
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 加えて、住宅実務者の雨漏りに対する法的責任も重くなっている〔図2〕。99年以前、木造住宅の瑕疵担保責任期間は引き渡しからわずか1年間だった(当時の民間連合協定工事請負契約約款の規定)。

〔図2〕20年間にわたって責任追及される時代が到来
〔図2〕20年間にわたって責任追及される時代が到来
1999年以前は木造住宅の瑕疵担保責任期間は引き渡しから1年とされていた。その後、2000年の品確法の施行で10年となり、さらに11年の最高裁判決で民法の不法行為責任の範囲に漏水が明示され、20年間にわたって責任追及される時代が到来した(資料:日経ホームビルダー)
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 それが2000年の品確法施行で雨水浸入などの瑕疵担保責任は10年間に延びた。さらに、11年の最高裁判決で、民法上の不法行為責任に基づく損害賠償の対象に「漏水」が含まれるとの判断が示された。不法行為の時効(除斥期間)は20年間。引き渡しから20年にわたり、雨漏りの欠陥責任を問われる時代が到来した。