通称「2000年改正」。日経ホームビルダー創刊の翌年、2000年に施行された改正建築基準法は、家づくりに欠かせない行政手続きである建築確認制度を大きく変貌させた。
背景にあったのは阪神大震災で明るみに出た欠陥建築問題だ。現在も続く指定確認検査機関制度が、確認業務を担う特定行政庁(都道府県や市町村の建築指導課など)の人手不足を理由として創設された。住宅など小規模な建物でも法規制を徹底させるための仕組みといえた。
改正法施行から2年後に日経ホームビルダーが組んだ特集が「なんか変だぞ建築確認」。民間開放と並行して行われた旧建設省通達や建基法旧38条の廃止によって、建築確認の難易度が急激に上がった。確認が下りず、着工が遅れるケースも相次いだ〔図1〕。
「国は聞いても答えてくれない。自由に判断してよいとも言わない」。日経ホームビルダーが当時実施したアンケートには、建築主事たちからそんな困惑の声も寄せられた。
建築確認は当時も現在も、原則として行政庁の羈束(きそく)行為(法令で定められたルールへの適合性のみを判断するもの)とされる。確認窓口が勝手な解釈で法違反の確認を下ろせば処分を受けるだけに、審査ルールの再整備などで収束には時間がかかった。
事件のたびに厳格化
05年に起こった耐震偽装事件を契機に、建築関連法令は一気に本格的な規制強化へ舵(かじ)を切った。国土交通省の社会資本整備審議会は建築分科会に「基本制度部会」を設置。構造計算適合性判定機関の新設を柱とする建基法改正、建築士法の罰則強化、住宅瑕疵担保履行法による瑕疵保険制度の創設を相次ぎ提言し、現在の制度を形づくった〔図2〕。
一連の改正法施行を控えた06年6月、大量の戸建て住宅で法違反が発覚する。一建設、アーネストワンなどが分譲した住宅で起こった壁量不足問題だ。見切り発車で申請し、その後に申請書を何度も差し替えるずさんな業務実態が、設計ミスを誘発していたことが確認された〔図3〕。
耐震偽装事件、壁量不足問題を受け、確認申請は07年の改正建基法の施行とともに一気に厳格化、新設住宅着工戸数が急落した〔図4〕。
近年、引き渡し直後から紛争に突入するような欠陥建築は明らかに減った。これは中間検査、完了検査の義務化を含む建築確認制度の強化、制度厳格化に適応した住宅会社の努力があってのことだ。片や、建築士の業務負担や手続きは格段に増えた。