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設計本部がレシピを用意

 ウエルネス作業所のコストは、同規模の従来作業所と比べて2倍に満たないという。それは環境配慮対策も含めた金額だ。仮設作業所としては国内初となる、建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)でZEB Ready認証を取得。5段階評価の最高ランクを獲得している〔写真4〕。

〔写真4〕取り組みを作業員たちに看板などで伝える
〔写真4〕取り組みを作業員たちに看板などで伝える
現場の入り口から作業所へと続く通路には、環境配慮などウエルネス作業所の取り組みについて説明する看板を置いている(写真:日経アーキテクチュア)
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 大成建設はウエルネス作業所において、一般のオフィスでも導入が進む「アクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW)」やWELL(ウェル)(健康増進などの観点で建築を評価する認証)の考え方をどう現場に持ち込めるかを重視した。「日々、工事現場にいる私たちでも、思いつかないアイデアが多数あった」と、伊田作業所長は言う。

 この仕組みの鍵を握るのが、同社設計本部が用意する約100種類の「ウエルネスレシピ」の活用だ。配置計画やコミュニティーを促すスペースの提案、仕上げ素材など、設計上の取り組みを分かりやすい項目に落とし込み、大きく3つに分類した。作業所の所長は、それぞれの現場に適した項目を選択するだけでよい〔図2〕。将来は、設計本部が関与せずとも、レシピを使って自律的に各現場で作業所を構成できるようにしていく。

〔図2〕設計本部がひな形を提示する仕組み
〔図2〕設計本部がひな形を提示する仕組み
大成建設の設計本部が約100種類のレシピを作業所に提案する。将来は、設計本部が関与せず、レシピを使って自律的に作業所をつくる(資料:大成建設)
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 現在は他に2カ所、「千葉市新庁舎整備工事作業所」(千葉市)と「下高井戸調節池工事作業所」(東京・杉並)でウエルネス作業所を試験導入した〔写真5〕。同社は20年3月下旬、上記の赤坂と下高井戸で、合計12人の社員を対象にアンケートを実施〔図3〕。コミュニケーション促進や個人作業の効率アップなどに期待を寄せていたことが分かった。

〔写真5〕現場ごとにレシピをカスタマイズ
〔写真5〕現場ごとにレシピをカスタマイズ
千葉市新庁舎整備工事作業所に設けたウエルネス作業所。写真はホワイエ内観。工事を見学に来る人が多い現場のため、来客スペースにも活用する(写真:大成建設)
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〔図3〕コミュニケーション促進や作業効率アップに期待
〔図3〕コミュニケーション促進や作業効率アップに期待
大成建設は東京・赤坂と下高井戸にあるウエルネス作業所で、合計12人の社員を対象にアンケート調査を実施した。調査時期は2020年3月下旬(資料:大成建設)
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 伊田作業所長も、「気付けば人が輪になり、互いに話しかけやすくなったと、職長や作業員たちも喜んでいる」と評価する。さらに、「作業所の良い評判が広まれば、人材確保もしやすくなる」と話す。作業所の改善は、生産性向上にもつながる。

 現場作業所は仮設だからこそ新しい挑戦ができるともいえる。同社では魅力ある職場づくりを目指し、「TAISEI Creative Hub」と呼ぶ取り組みをこれまで進めてきた。ウエルネス作業所はその一環となる。今後は、その効果も踏まえて、東京・新宿にある本社のワークプレイスも見直していく考えだ。