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デザインビルド方式による庁舎建設のプロポーザルで、異例の事態が立て続けに発生している。1次審査を通過した3者のうち2者が突然の失格に。その決定プロセスを巡って、審査を担う委員の大半が辞任した。

 大阪府岸和田市が新庁舎の設計・施工者を選ぶために実施した公募型プロポーザルを巡って、混乱が広がっている。1次審査を通過した3者のうち2者を失格とした市の決定プロセスに対し、審査を担う選定委員会の外部委員5人のうち4人が異議を唱えて辞任。4人の元委員は1月5日、「公共建築の制度設計上、大きな禍根を残す」などと表明した。委員会の役割や在り方に対する市との認識の隔たりが、異例の大量辞任につながった。

 問題発生までの経緯は次の通りだ。老朽化や耐震性能の不足を理由に現庁舎の建て替えを検討してきた岸和田市は2020年3月、新庁舎の整備基本計画を作成した〔写真1〕。20年6月に公募型プロポーザルを公告。設計・施工を一括で発注するデザインビルド方式を採用した。提案上限価格は127億500万円(税込み)だ。

〔写真1〕岸和田市が新庁舎建設を計画
〔写真1〕岸和田市が新庁舎建設を計画
竣工から45年以上が経過している、岸和田市の現庁舎。市は老朽化や耐震性能の不足を理由に建て替えを検討してきた(写真:岸和田市)
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発端は副市長への名刺

 設計・施工者の選定に当たっては、建築や都市計画などを専門とする外部委員5人に堤勇二副市長を加えた計6人による「岸和田市新庁舎設計及び施工事業者選定委員会」を設置し、審査を進めた。

 委員長には京都工芸繊維大学の仲隆介教授が、副委員長には京都大学大学院の川﨑雅史教授が就任。シーラカンスアンドアソシエイツ(東京都渋谷区)の赤松佳珠子代表、設計組織アモルフ(京都市)の竹山聖代表、大阪府立大学の橋爪紳也特別教授が委員に名を連ねた。

 プロポーザルに参加したのは3者。社名を伏せて20年9月に実施した1次審査を3者とも通過し、2次審査に進んだ。問題は、2次審査用技術提案書の提出期限である同年11月26日に起こった〔図1〕。市の説明によると、市役所に足を運んで書類を提出した3者のうち2者の構成企業がそれぞれ秘書課を訪れ、永野耕平市長と堤副市長が在席しているか確認。不在と分かると市職員に名刺を言付けて帰ったという。

〔図1〕技術提案書の提出日以降、事態が急転
〔図1〕技術提案書の提出日以降、事態が急転
1次審査を通過した2者が秘書課を訪問した2020年11月26日以降、事態が急転。2者の失格や外部委員の辞任などに発展した(資料:岸和田市の資料などを基に日経アーキテクチュアが作成)
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