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市長交代に伴う設計契約の途中解除を巡る訴訟で、業務の既履行分に当たる約1627万円を山本理顕設計工場JVに支払う和解案を、天草市が受け入れた。山本理顕氏は、市が損害賠償責任を認めた意義を強調する。

 熊本県天草市による新庁舎の建築設計業務委託契約の解除を巡り、山本理顕設計工場など4社(以下、山本理顕設計工場JV)が同市に対して設計料の未払い金3000万円などを支払うよう求めた訴訟で、和解が成立した〔写真1〕。

〔写真1〕既履行分の実施設計業務に対する報酬を支払うよう求めた
〔写真1〕既履行分の実施設計業務に対する報酬を支払うよう求めた
山本理顕設計工場の山本理顕代表。設計業務の途中解除を巡る訴訟で和解した(写真:日経クロステック)
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 横浜地方裁判所は1月8日、市が山本理顕設計工場JVに対して、実施設計業務の既履行分に当たる1626万8000円を損害賠償金として支払うことなどを盛り込んだ和解案を提示。両者が受け入れた。

 原告側代理人を務めたアテナ法律事務所の林陽子弁護士は、「紛争解決を求める訴訟で和解が成立する場合、一般的に『解決金』など中立的な表現で和解案が示される場合が多い」とする。原告代表の山本理顕氏は、「解決金の支払いといった曖昧な形で終わらず、既履行分の設計業務について市が損害賠償責任を認めた点に意義がある」と語る。

 天草市総務部財産経営課の宮内祐貴係長は、「市政の事情による契約解除だったことは確かだ。契約約款に従い(設計者の)逸失利益を支払ったまでだ」と話す。

 今回の訴訟は、天草市が2014年8月、政策変更を理由に契約を解除したことに端を発する。

 市は13年6月にくまもとアートポリス事業に参加し、市庁舎建設に向けた公募型プロポーザルを実施。山本理顕設計工場JVを選定し、業務委託契約を結んだ〔図1〕。

〔図1〕基本設計時の完成予想図
〔図1〕基本設計時の完成予想図
設計JVは山本理顕設計工場、IGA建築計画、廣田建築・都市設計工房、フジモトミユキ設計室から成る(2015年10月に風設計室が脱退)(資料:山本理顕設計工場)
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 契約金額は基本設計と実施設計を合わせて1億6498万円だ。しかし、14年3月の選挙を経て市長に就任した中村五木氏が、アートポリス事業からの撤退を表明。市は契約を途中で解除した〔図2〕。

〔図2〕提訴から和解までに3年半を要した
2013年6月17日 プロポーザル公示 天草市がくまもとアートポリス参加事業として実施。審査委員長は建築家の伊東豊雄氏
9月22日 プロポーザル2次審査 最優秀者:山本理顕設計工場
11月14日 建築設計業務委託契約締結 業務委託料:約1億6498万円(税込み)
2014年3月23日 天草市長選挙 即日開票で、中村五木氏が当選
3月24日 変更契約締結 市長選などに伴い、13年度末としていた一部支払いの履行期限を14年度へ変更
6月27日 基本設計成果品検査・納品 のちに天草市から山本理顕設計工場JVに4860万円入金
7月15日 業務一時中止通知
8月19日 契約解除通知
2015年4月6日 プロポーザル公示 天草市は「天草市本庁舎建設基本計画」を15年2月に見直した。事業費を65億3700万円から48億円に、また建設規模も縮小。プロポーザルでは参加資格要件が変わり、九州に拠点を置かない山本理顕設計工場は参加できなかった
7月22日 プロポーザル2次審査 最優秀者:日建設計九州オフィス
2016年6月27日 横浜地裁に提訴 原告:山本理顕設計工場JV
2019年10月2日 専門委員が意見を提出 横浜地裁所属専門委員の古澤昌之・一級建築士が実施設計の既履行分に関する意見書を提出
2020年1月8日 和解が成立 天草市は「実施設計の既履行分に相当する損害金」として1626万8000円を原告に支払う義務があることを認めた
天草市と山本理顕設計工場JVが争った経緯(資料:訴状や取材を基に日経クロステックが作成)

 市は14年6月に山本理顕設計工場JVが納品した基本設計の成果品に対して4860万円を支払った。その後、両者は実施設計の既履行分の報酬額について協議したが、意見は折り合わず。山本理顕設計工場JVは16年6月、基本設計と並行して進めていた実施設計業務に対する報酬を支払うよう求めて提訴した。